2003年。50セントは、エミネムと、エミネムをプロデュースしたドクター・ドレーが協力するギャングスタ・ラップ・アーティスト。過激さを前面に出すアーティストは、自らが属するエンターテイメント(50セントの場合、ヒップホップ、または音楽)の中で演じる限りにおいて、その過激さが成り立つ。ロックで言えばアリス・クーパーのようなショック・ロック、ヘビーメタルで言えばブラック・メタルや「正統派メタル」と同じで、聞き手がこけおどしと言えば言うほどそのアーティストを称賛していることになる。銃が50セントのトレードマークのようになっているらしく、アルバムの中に銃声が頻繁に出てくる。声にくせがなく、自然にボーカルが流れていく。「ヒート」は銃声をリズムにしている。「プア・リル・リッチ」はホット・バターの「ポップコーン」をサンプリングしたようなサウンドだがブックレットにそうした表記はない。全米1位、600万枚。
2005年。邦題「ザ・マッサカー~殺戮の日」。「イントロ」は銃の連射の音。ジャケットもサウンドも前作と同様に男性性を強調している。「ピギー・バンク」は女性コーラスとストリングス風シンセサイザーと音圧のあるバスドラム音で不穏な雰囲気になっている。「スキー・マスク・ウェイ」などはポップだ。「ソー・アメイジング」はスティービー・ワンダーの「パートタイム・ラヴァー」に似たメロディー。「ジャスト・ア・リル・ビット」はやや日本風のサウンド。「ディスコ・インフェルノ」収録。全米1位、500万枚。
2007年。ジャスティン・ティンバーレイク、ティンバランド、メアリー・J・ブライジ、プッシーキャット・ドールズのメンバーを招いている。「イントロ」は銃声が出てこない。ゲストが出てくる曲はサウンドが目立つが、50セントが単独で歌っている曲は一般的なヒップホップが多い。全米2位、100万枚。