1991年。2パックのアルバムの中で、このアルバムだけがいわゆるコンシャス・ヒップホップにあたるとされる。アフリカ系ヒップホップ・アーティストが社会的メッセージを多く含んだアルバムを作った場合、その作品がコンシャス・ヒップホップと呼ばれる。そこには、アフリカ系アメリカ人は若干の白人優位「ソウルジャズ・ストーリー」「ブレンダズ・ゴット・ア・ベイビー」「パート・タイム・マザ」が意味を持った曲とし挙げられている。「パート・タイム・マザ」はスティーヴィー・ワンダーの「パートタイム・ラヴァー」を引用している。ハービー・ハンコックの曲を使った曲が2曲ある。「トラップド」収録。
1993年。このアルバムからサウンド面ではギャングスタ・ラップとなり、派手だ。都市部の雑踏の喧騒を反映したノイズや歪んだ音が大量に入っている。オープニング曲の「ハラー・イフ・ヤ・ヒア・ミー」はアフリカ系アメリカ人の貧困や警察の人種差別など、パブリック・エナミーがこれまでテーマにしてきた社会問題に加え、白人にもあった扶養放棄を扱っている。「キープ・ヤ・ヘッド・アップ」はアフリカ系アメリカ人の女性に目を向ける曲。支配されるアフリカ系の、さらに支配される女性を、男性が歌っていることが重要。「アイ・ゲット・アラウンド」は2パックの最初のヒット曲だが、歌詞はギャングスタ・ラップのような絶倫自慢。白人を含めた一般人がアフリカ系アメリカ人のイメージにに合致した曲を求めた結果であることは否めない。日本盤は1997年発売。
1994年。サグ・ライフは2パックを含む5人のグループとされている。「ストリクトリー・4・マイ・ニガズ」よりは落ち着いたサウンド。2パックのアルバムの中では評価が高くない。「ミー・アゲインスト・ザ・ワールド」や「カリフォルニア・ラヴ」に比べると中途半端な印象だ。日本盤は1997年発売。
1995年。アルバムタイトル曲や「ソー・メニイ・ティアーズ」「ヤング・ニガズ」「ロード・ノウズ」「イッツ・エイント・イージー」「デス・アラウンド・ザ・コーナー」「アウトロー」といったほとんどの曲が、2パック自身の人生、特に少年時代から青年時代の境遇を通じて、アフリカ系アメリカ人の若年層に賢明な生き方を推奨する。「イントロ」で2パックの銃撃に関する報道をサンプリングし、「イフ・アイ・ダイ・トゥナイト」以降で過去の自省、懺悔、若者への教育、母への感謝を述べていく。2パックはイメージとしてギャングスタ・ラップのアーティストという側面を持っているが、このアルバムはそのイメージと異なり、80年代後半のラン・DMC、90年前後のブギ・ダウン・プロダクションズのように、若者を啓蒙している。ブギ・ダウン・プロダクションズのKRS・ワンやパブリック・エナミーのチャック・D、ラン・DMCのメンバーはいずれも、アフリカ系アメリカ人としては高い教養を持ったアーティストで、その教養の高さから若者を「指導」するというイメージが消えなかった。2パックは曲の中で「そうした人生を選ぶしかなかった」「自分の境遇に疑問を持つ暇はなかった」と歌いながら、自らの人生を反面教師として若者を説得する。2パックの自省は「ディア・ママ」で母親への謝罪と感謝につながる。ヒップホップであってもロックであっても、あるいは映画や文学であっても、表現の幅を多少広げるよりは社会の進展につながる作品の方が一般的評価は高い。そこには沈思し、黙考する態度を文化度の高い態度と評価する白人的価値観が含まれているが、だからこそヒップホップのみならず広くポピュラー音楽の基準でも評価されることになっている。「キャン・U・ゲット・アウェイ」は「キープ・ヤ・ヘッド・アップ」に通じる抑圧された女性へのメッセージ。アルバム全体として整理されたサウンドになり、歌い方にも余裕がある。不気味な恐さを出しているとも言えるが、2パックの音楽以外の話題を特に気にしない人には、ミドルテンポの穏やかな曲に聞こえる。代表作。
1995年。シングル盤。2パックの代表曲。日本盤は1996年発売。
1996年。邦題「カリフォルニア・ラヴ」。2枚組。ドクター・ドレーのデス・ロウ・レコードから発売された。「ミー・アゲインスト・ザ・ワールド」のサウンド。2枚組のうち、1枚目の前半はギャングスタ・ラップのイメージに沿った自意識過剰気味の歌詞が続く。「ライフ・ゴーズ・オン」「オンリー・ゴッド・キャン・ジャッジ・ミー」は「ミー・アゲインスト・ザ・ワールド」に近い歌詞。前作で内省的な歌詞を作っているので、ギャングスタ・ラップの歌詞であってもある程度の距離を置いているのかもしれない。自意識過剰というよりは、自意識過剰を演じる2パックを歌っていると言える。生前に発売された最後のアルバム。
1996年。邦題「オール・アイズ・オン・ミー」。2001年の再発売で邦題が変更された。
1996年。2パックの死後発売されたアルバム。マキャヴェリに改名している。「ストリクトリー・4・マイ・ニガズ」のようなノイズの多いサウンド。刑務所内で録音しているので、凝った編曲や高い音質ではない。最後のアルバムとしては中途半端に終わっている。
1997年。2枚組、26曲収録。
1998年。2枚組、25曲収録。未発表曲4曲収録。
1998年。15曲収録。アウトロウズが参加。
2000年。10曲収録。
2001年。2枚組、29曲収録。
2002年。2枚組、27曲収録。
2003年。16曲収録。
2003年。15曲収録。
2003年。10曲収録。既存の曲に楽器を加えている。
2003年。14曲収録。未発表曲4曲収録。
2004年。13曲収録。
2004年。17曲収録。プロデューサーはエミネム。
2005年。25曲収録。
2006年。15曲収録。
2007年。14曲収録。
2007年。3枚組、40曲収録。
2007年。11曲収録。
2007年。11曲収録。未発表曲1曲収録。