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SUEDE

 
THE DROWNERS
1992年。4人編成。イギリス出身。6曲入り。かつてのグラム・ロックやニュー・ロマンティックスの妖艶さ、ボーカルのスター性、男性女性を混合させた歌詞、いわゆるブリット・ポップのサウンドで、デビュー時から大きな人気を得た。4曲はアルバム未収録曲。全曲をボーカルのブレット・アンダーソンとギターのバーナード・バトラーが作曲している。ボーカルはザ・スミスのモリッシーを思わせる。モリッシーの歌い方に似ていることは、スウェードの歌詞を知性的に感じさせる効果をもたらしている。
 
ANIMAL NITRATE
1993年。シングル盤。「ザ・ドラウナーズ」は明るめの曲調だったが、このシングルでは3曲ともタイプが異なる。「ペインテッド・ピープル」はアップテンポ、「ザ・ビッグ・タイム」はサックスが入った瞑想的な曲。
1
SUEDE
1993年。各楽器の音は過剰に歪んだり濁ったりせず、80年代風の明瞭なサウンドになっている。スウェードが、サウンドの新奇性や音による時代の反映を意図するバンドではなく、歌詞の文化性やボーカル表現等を重視するバンドであることが分かる。性的歌詞が多く、規範に対する挑発も含んでいる。そのことによって12曲のうち4曲はシングルに入っている曲。
STAY TOGETHER
1994年。EP盤。ギターのバーナード・バトラーが参加する曲では最大のヒットとなった。8分半ある。エディット・バージョンは4分強。
2
DOG MAN STAR
1994年。キーボード、コーラスが増えたのに加え、曲が前作以上にすばらしい。アップテンポで高揚させることを狙った曲はなく、ザ・スミス、U2のように歌詞を聴き取りやすくしようとするバンドだ。ただ、スウェードが歌うメッセージは、内容的に中間層以上の少数派に評価され、大多数の大衆層には伝わらない。したがって大きなヒットにはならないが、後の影響が大きいアルバムになるだろう。明るめの曲調が少ないのは流行を反映しているが、バラードではドラマチックに盛り上げる力があるため、緊張感を維持することができる。「アスファルト・ワールド」は9分半。
WE ARE THE PIGS
1994年。シングル盤。「キリング・オブ・ア・フラッシュボーイ」「ウィップスネイド」はアルバム未収録曲。
3
COMING UP
1996年。ギター兼キーボードのバーナード・バトラーが抜け、ギターとキーボードが加入。5人編成。曲は新しく加入したギターとキーボード、ボーカルの3人で作っている。各楽器が均等に並び、ギターやキーボードの個性が強く出るような曲はない。明るめの曲もあり、多くの人になじみやすいサウンドになった。メンバーが変わったため、安心感を持たせるための明るさもあるだろう。歌詞は若年層の代弁のような、大衆層の共感を得やすい内容になっており、バーナード・バトラーが抜けた影響はここに出ているのかもしれない。明瞭に歌うボーカルは変わらない。
4
HEAD MUSIC
1999年。ギターの音がロックらしくなり、ドラムも生々しさを残した演奏になっている。サウンド全体もインダストリアル・ロックに影響を受けたような人工的雰囲気がある。キーボードの役割がキーボードとコンピューターになったようなサウンド。そうした曲の間に「カミング・アップ」の路線の曲が挟まれている。アルバムの中盤からはテンポを落とした諦観のある曲が多くなる。この雰囲気とエレクトロニクスを取り込んだロックが90年代のロックか。
 
ELECTRICITY
1999年。シングル盤。6曲収録。「ウォータールー」はアバのカバーではない。
5
A NEW MORNING
2002年。キーボードが抜け、ギター兼キーボードが加入。曲調は前作よりも前向きで、サウンドもなじみのあるストリングスやアコースティックギターを使い、エレクトロニクスを減らしている。このことは、バンドの迷いを示している。デビュー当初は、知性の高い歌詞とそれを具現化するサウンドが知性の高い音楽関係者に評価されたものの、一般の聞き手は大多数が知性の高くない大衆であるため、音楽関係者と同じ評価に至らず大きなヒットにならなかった。そこで2枚目以降は流行に合わせて暗めの曲調にしたりエレクトロニクスを導入してヒットにつなげようとしたが、大衆に理解されやすいオアシスやレディオヘッドの方がヒットしてしまう。オアシスもレディオヘッドもスウェードも音楽関係者の評価は高いが、評価される点はそれぞれ異なり、スウェードの評価は大衆に最も理解されにくい部分だった。オアシスとレディオヘッドは現状追認から発する反抗であり、多数の共感を得やすいのに対して、スウェードは規範への挑発であり、規範に疑問を持たない多数、規範を対象化できない多数には、色物としか映らない。スウェードは性的規範を揺るがそうとしたため、文字通りの「色物」であった。ポピュラー音楽においては多数の支持が重大な指標であるため、「音楽関係者の高い評価」に見合わない「聞き手の低い支持」が、バンドを迷わせることになっている。このアルバムで解散。
 
INSTANT SUNSHINE EP
2003年。シングルのB面曲を集めた企画盤。6曲収録。
 
 
SINGLES
2003年。シングル集。新曲2曲収録。
6
BLOODSPORTS
2013年。「ニュー・モーニング」のメンバーで再結成。90年代の「ズーロッパ」「ポップ」を通過したU2のような、あるいは3人になって再出発したときのマニック・ストリート・プリーチャーズのような、基本的なバンドサウンドに戻っている。ボーカルのブレット・アンダーソンは伸びやかに歌い上げる。ジャケットは「カミング・アップ」の続編のように見えるが、立ち返ったアルバムが「スウェード」ではなく「カミング・アップ」だと主張するかのようだ。歌詞は1組の男女について、男性を一人称とする物語が多い。「ホワット・アー・ユー・ノット・テリング・ミー?」以降の3曲は哀感が漂う。
7
NIGHT THOUGHTS
2016年。邦題「夜の瞑想」。前作の後半の雰囲気をオープニング曲の「ウェン・ユー・アー・ヤング」に引き継ぎ、ストリングスとキーボードでやや大仰に始まる。この曲は11曲目にも似たタイトルで出てくるが、時制が異なり「ウェン・ユー・ワー・ヤング」となっている。2曲目以降はキーボードを含むバンドサウンド。「タイトロープ」「ラーニング・トゥー・ビー」「アイ・キャント・ギヴ・ハー・ワット・・シー・ウォンツ」のような、夜の瞑想と言えるような雰囲気の曲を並べた後、「ウェン・ユー・アー・ヤング」で区切りを付け、最後の「ザ・ファー・アンド・ザ・フェザーズ」で総括している。このアルバムの主題は取り返すことのできない過去とそれを受け入れざるを得ない人間の宿命と言える。男女の人間関係が破綻したり切断されたりしたときには、過去が戻っては来ないことを理屈では理解できても、感情ではそれを受け入れることがなかなかできない。村上春樹はそれを小説の形で「ノルウェイの森」として書き、スウェードのブレット・アンダーソンは曲にして表現している。ブレット・アンダーソンはスウェード再結成後、その高い知性をデビュー当時とは異なる方向で発揮している。

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