PARAMORE

パラモアは、女性ボーカルのヘイリー・ウィリアムズとギター兼ボーカルのジョシュ・ファロを中心とするロックバンド。4人編成。アメリカ出身。ギターとドラムは兄弟。「ブラン・ニュー・アイズ」を最後に脱退している。女性ボーカルがいるエモのバンドとしてデビューし、徐々にポップ化。「パラモア」では女性ボーカルのいるポップなロックバンドとなっている。

1
ALL WE KNOW IS FALLING

2005年。ギター兼ボーカル2人の5人編成。ギター2人のメロディアスなロックバンドに、若い伸びやかな女性ボーカルが乗る。バンド演奏はエレクトロニクスやノイズを含まず、キーボードも使わないほぼバンド編成だけでのサウンド。「マイ・ハート」は男性ボーカルが絶叫型ボーカルを入れているが、ほかの曲ではバックボーカルをとっている。ポップで明るい曲はなく、歌い上げる曲ばかりなので、若い聞き手に広く受け入れられるかどうかはこれからの曲の広がり次第だろう。

2
RIOT!

2007年。曲の幅が広がり、若さを前面に出したアップテンポな曲や、アメリカの大陸的な広がりのある曲が増え、広い階層に受け入れられるサウンドになった。アメリカの(白人の)多数が安心して容認できる若い女性像をヘイリー・ウィリアムズ体現し、それに合ったサウンド、すなわちノイズがなくエレクトロニクスの刺激音がほとんどないサウンドしている。「ミザリー・ビジネス」がヒットして知名度が大きく上がった。「ウィ・アー・ブロークン」はキーボード中心のバラード。「ザッツ・ワット・ユー・ゲット」「クラッシュクラッシュクラッシュ」収録。全米15位。

3
BRAND NEW EYES

2009年。前半は前作の路線、後半は90年代後半のオルタナティブ・ロックを受けたような、あるいは受けさせられたようなロックになっている。「イグノランス」「ブリック・バイ・ボーリング・ブリック」はライブで盛り上がるであろうポップな曲。「ジ・オンリー・エクセプション」「ミスガイデッド・ゴースツ」はこれまでなかったアコースティックギターによる演奏。全米2位。

4
PARAMORE

2013年。ギターとドラムの兄弟が抜け3人編成。作曲はヘイリー・ウィリアムズと残ったギターの2人で行われている。キーボードを使う曲が多くなり、デビュー当初のエモを思わせる曲は少ない。曲調は広がっていると言えるが、その曲調はいずれもロックの世界で一定の支持があるサウンドであり、刺激に欠ける。「フューチャー」はシューゲイザーの影響を受けたようなポストロック。「エイント・イット・ファン」はキーボードを使い、途中でゴスペルコーラスが使われる。全米1位。

5
AFTER LAUGHTER

2017年。ベースが抜けドラムが復帰、3人編成。バンドをいったんリセットしたかのように曲調が変わり、シンセサイザー中心のポップスとなった。メンバー全員がキーボードを演奏する。ギターがプログラミング、プロデュース、ミキシングをしているので、曲調の変化を担ったのはギターと推測できる。オープニング曲や「トールド・ユー・ソー」「プール」のパーカッションとマリンバ、「ノー・フレンド」の実験性を考えると、このアルバムをニューウェーブの2010年代版と捉えてもよい。

6
THIS IS WHY

2023年。再び曲調が変わり、ギター中心のポストパンクになっている。ギターは厚みを抑えた鋭い音を多用する。シンセサイザーなどのキーボードも使うが最小限だ。ヘイリー・ウィリアムズは歌詞がよく聞き取れる歌い方をし、「ザ・ニュース」はメディアとの接し方の問題、「ランニング・アウト・オブ・タイム」は諸々の儀礼に追われて余裕を失う現代人、「ビッグ・マン、リトル・ディグニティ」は著名な男性への批判を歌う。これに対してアルバムタイトル曲は、それらの主張や不満を強く押し出さず、自己を抑制したいという。家を出ると急降下するかもしれないという歌詞は、何かを外に向かって発すればブーメランのように返ってくる再帰性、すなわち炎上のメタファーとして解釈できる。時代を反映したアルバム。