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PAIN OF SALVATION

1
ENTROPIA
1997年。キーボードを含む5人編成。スウェーデン出身。ほとんどの曲をボーカルが作曲している。ドリーム・シアターが成功してから出てきた一群のプログレッシブ・ヘビーメタルのサウンド。80年代でバンドを始めており、80年代の流れを汲む90年代のハードなロックに影響を受けたことは容易に想像できる。「ストレス」「トゥ・ジ・エンド」「ナイトミスト」のような曲は、バンドとしてやりたい曲なのだろう。ボーカルがやや一本調子だが、ある程度はコーラスでカバーしている。1分台以下の短い3曲はインスト。曲は3分から9分までまちまち。日本盤はアルバムの途中にボーナストラックが入っている。
2
ONE HOUR BY THE CONCRETE LAKE
1998年。ギターが交代。ハードになり、キーボードとベースの活躍が大きくなった。コンセプトアルバムになっており、アルバムの前半は戦争、後半は放射性廃棄物が集められた湖をテーマとしている。サウンドはヘビーメタルの範囲内に収まっており、ドリーム・シアターの「アナザー・デイ」のような一般の洋楽ファンにも聞ける曲はない。明るめの曲や一般性のある曲がないうえに、ボーカルが力量不足なので、このままヘビーメタルの中だけの人気でとどまる恐れが強い。この時代に、多少の個性があったとしても、プログレッシブ・ヘビーメタルだというだけでは苦しい。1曲ごとにコメントがついている。
3
THE PERFECT ELEMENT, PART1
2000年。子どものセックス、親族の喪失、精神的成長と葛藤、中二病といった内面的に重いテーマを扱っている。KORNやリンキン・パーク、アラニス・モリセット、ニルヴァーナ、パール・ジャム等が取り上げてきた青年期の負の記憶や烙印をプログレッシブ・ヘビーメタルに乗せている。比較的自由に曲調を変更できるプログレッシブ・ヘビーメタルのよさを、主人公の内面の転換にあてている。「イン・ザ・フレッシュ」「アッシェズ」がハイライトだろう。90年代半ば以降、ロックの世界的な傾向(の一つ)は陰鬱な気分、将来の不透明さをサウンドに反映させることだった。その典型例、あるいは時代の牽引役としてグランジ、オルタナティブ・ロック、ラウドロックがあり、若い中間層の支持を得てきた。グランジ、オルタナティブ・ロックは内容と音が両輪として駆動していたが、プログレッシブ・ヘビーメタルの場合、音に保守性があり、広い支持を得ることはなかなか難しい。グランジやオルタナティブ・ロックの一部が自己体験から来ているのに対し、このアルバムは第三者から見た光景として描かれているのも説得力の面で弱い。しかし、人間の内面に踏み込んだことは大きな進歩で、ヨーロッパでの支持は高くなるだろう。1曲が1分ずつくらい長くなった。10分を超える曲が初めて出てくる。
4
REMEDY LANE
2002年。ボーカル兼ギターのダニエル・ギルデンロウの体験に基づき、男女の心理や自己分析について描かれている。13曲が3部構成になっている。それぞれ21、22分ずつ。曲の構成力、各楽器、ボーカルの表現力が前作までに比べて大きく飛躍した。ヨーロッパから出てきたプログレッシブ・ヘビーメタルとしてはレベルが高いが、ロックの表現領域を広げるほどではない。「ファンダンゴ」は幾分ラウド・ロックの影響があり、うまいバランスで取り入れている。
 
 
12:5
2004年。ライブ盤。
5
BE
2004年。15曲が5部に別れている。曲によってはさらに2部、3部に分かれている。エンディング曲はオープニング曲とそのままつなげることができるメロディーで、人間の存在意義や輪廻転生をテーマにした作品によくある手法だ。バンドのほかに、9人編成のオーケストラが演奏に加わっており、教会オルガンも入る。したがって、メロディー楽器が大幅に増え、曲を作る上での編曲の自由さが拡大している。相対的にギターの貢献度が低くなっており、個々の曲を見ればヘビーメタルとは言えない曲が過半数を占める。サウンドを転換させ、ヘビーメタルからゴシック・ロックに移ったとも言える。曲名が英語でなかったり、テーマが抽象的だったりするため、一部の層の評価にとどまるだろうが、ヘビーメタルを超えて表現を拡大しようとする姿勢は注目に値する。曲のバックに人の話し声を入れている曲が多い。その中に日本語も出てくる。
6
SCARSICK
2007年。ベースが抜け4人編成。ベースはボーカル兼ギターのダニエル・ギルデンロウが演奏している。バンドサウンドに戻り、ヘビーメタルとなっている。「ザ・パーフェクト・エレメント・パート1」の続編だという。アルバムタイトル曲は10年遅れのオルタナティブ・ロックのようだ。「スピットフォール」も同様。「アメリカ」は途中でバンジョーが使われるので、一部カントリー・ロックだ。「ディスコ・クイーン」はディスコのサウンド。アナログ盤のようにA面、B面が設定されていて、サウンドの個性が明確な曲はA面、従来のプログレッシブ・ヘビーメタル路線はB面となっている。これまでと異なるサウンドを前半に置くのは、アルバムを注意深く聞かせるための手法だが、何度も使える方法ではない。
LINOLEUM
2009年。EP盤。6曲収録。ドラムが交代。キーボードが少なめのフー・ファイターズ風オルタナティブロックとなっている。「イエロー・レイヴン」はスコーピオンズのカバー。
7
ROAD SALT ONE
2010年。キングス・オブ・レオン、デレク・トラックス・バンド、ジョン・スペンサー・ブルース・プロジェクト、ホワイト・ストライプス等を思わせるオルタナティブロック。序盤の「ノーウェイ」「シー・ライクス・トゥ・ハイド」を聞けばブルースロックのように聞こえるが、その後ブルースロックだけではない曲が次々に登場し、90年代から2000年代のオルタナティブロックに影響を受けていることが分かる。ペイン・オブ・サルヴェイションはもともとプログレッシブ・ヘビーメタルのバンドであるため、ヘビーメタルを偏重する多くの聞き手はこのアルバムの影響元として70年代ブルースロックに強く引きずられるとみられる。しかし、聞き手がハードロック、ヘビーメタルの系譜の上流にあると考えるブルースロックを影響元として偏重し、ルーツに対する敬意などと解釈するよりも、デビュー当時にロックの主流であったオルタナティブロックを、メンバーがプログレッシブ・ヘビーメタルと同様に影響を受け、オリタナティブロックが表出したと考える方が自然だ。
8
ROAD SALT TWO
2011年。前作と連続性を持たせ、サウンドもオルタナティブロックを継承している。伝統的な楽器の音を意識的に選んでいるとみられるが、古風なシンセサイザーの音も使われている。オルタナティブロックの範囲内で、古典的なハードロックを通過したロックを選び、ファンクやヒップホップ、インダストリアルロック、エレクトロ音楽を含んだロックを避けている。ヘビーメタルからスタートしたバンドとして、古風なサウンドは作曲時にイメージしやすかっただろう。ブルースロック、プログレッシブ・ロック、ハードロックといった、70年代を想像させる特定のジャンルに収斂しないところが2000年代的であり、それが同時代性だとも言える。アルバムの最初と最後は弦楽演奏。
FALLING HOME
2014年。過去のの再録音。アコースティックギター中心。ルー・リードとディオのカバーを含む。
9
IN THE PASSING LIGHT OF DAY
2017年。ボーカル兼ギターのダニエル・ギルデンロウが自らの体験に基づき、病院での心理状態を曲に反映させている。曲は全体として陰鬱だ。「ロード・ソルト・ワン」「ロード・ソルト・ツー」のサウンドを継承せず、ヘビーメタルに近いバンドサウンドに戻している。表現可能性よりも感情が先に立っているので、ペイン・オブ・サルヴェイションのアルバムとしては特殊と言える。「フル・スロットル・トライブ」はリズムが技巧的だ。

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