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EMINEM

1
THE SLIM SHADY LP
1999年。エミネムはデトロイト出身の白人ラッパー。ポピュラー音楽史的には、世界的に売れた初めての白人ラッパー(個人)で、白人のヒップホップ・ファンを大量に増やした。人種差別がまだ残るアメリカでは、アフリカ系アーティストを白人が賞賛するのは抵抗がある。したがって、ファンを自称することに心理的抵抗が少なくなる白人アーティストは、白人にとって待望のスターとなる。ヒップホップをあまり聞かない洋楽ファンでもラップのうまさが分かる。「マイ・ネーム・イズ」は初期の代表曲。「カモン・エヴリバディ」「ロック・ボトム」はいい曲。全米2位、400万枚。
2
THE MARSHALL MATHERS LP
2000年。ギャングスタ・ラップが流行し、収束して以降もギャングスタ・ラップ風の雰囲気が全く求められなくなるわけではない。エミネムはギャングスタ・ラップを思わせる強い自己顕示を多少匂わせながら、皮肉のこもった視点と競争の敗者としての立場で多くの中間層の心境をすくい上げた。マーシャル・マザーズとはエミネムの本名。前作に続きうまいラップだ。「キル・ユー」は覚えやすいメロディー。「スタン」は女性ボーカルのダイドがいい働きをしている。熱狂的で精神的に病んでいるエミネムのファンの手紙を歌詞にし、最後にエミネムが応える。「ザ・ウェイ・アイ・アム」は短い間隔でたくさんの韻を踏み、歌い方も迫力がある。キーボードも不穏な雰囲気だ。「アイム・バック」「マーシャル・マザーズ」はいい曲。「キム」もドラマを感じさせるようなボーカルで、表現力がすばらしい。全米1位、全英1位、900万枚。
 
STAN
2001年。シングル盤。「ハザーダス・ユース(アカペラ・ヴァージョン)」は46秒。
3
THE EMINEM SHOW
2002年。ラップにメロディーがつくことが多くなった。歌詞の内容としては、巨大化する名声と、私的生活のトラブル、両者に翻弄される自分自身が多く、これまでに多くの有名アーティストが通過してきた事例である。名声を歌った曲は「シング・フォー・ザ・モーメント」、私生活は「ハーリーズ・ソング」、自身の立場では「ホワイト・アメリカ」になる。「シング・フォー・ザ・モーメント」はエアロスミスの「ドリーム・オン」をサンプリングし、エアロスミスのジョー・ペリーはギター・ソロも新たに加えている。「ウィズアウト・ミー」「ビジネス」収録。全米1位、800万枚。
 
CLEANIN' OUT MY CLOSET
2002年。シングル盤。エミネムの子ども時代を歌った曲。
LOSE YOURSELF
2003年。シングル盤。映画「8マイル」のサウンドトラック盤のシングル。「レネゲイド」はジェイ・Zと協演している。
4
ENCORE
2004年。「ザ・エミネム・ショウ」に続くアルバムということで、「アンコール」というタイトルになっている。前作ほど内省的ではない。「モッシュ」はブッシュ米大統領を批判する内容。ディクシー・チックスより後に発表されたので、ディクシー・チックスほどの話題にはならなかった。「ライク・トイ・ソルジャーズ」はマルティカの「トイ・ソルジャーズ」をサンプリング。「クレイジー・イン・ラヴ」はハートの「クレイジー・オン・ユー」をサンプリング。50セントが3曲で参加している。全米1位、500万枚。
 
CURTAIN CALL THE HITS
2005年。ベスト盤。新曲3曲収録。ボーナストラックの「スタン」はエルトン・ジョンが参加し、ダイドが歌っていたサビを歌っている。 
5
RELAPSE
2009年。ヒップホップのアーティストとしてはとても長い、5年空けてのアルバム。自堕落で破滅的な生活を歌詞にしているので、メッセージのようなものを読み取る気は起きない。「バグパイプス・フロム・バグダッド」はタイトル通りバグパイプが使われる。バグダッドに政治的意味は見出せない。「ビューティフル」はクイーン+ポール・ロジャースの「リーチング・アウト」をサンプリングしている。言葉をつないでいく作詞能力は(内容は別にして)相変わらず高い。「スティーヴ・バーマン(スキット)」によると、このアルバムの続編があるようだ。「クラック・ア・ボトル」収録。
6
RECOVERY
2010年。曲ごとにプロデューサーが異なるが、エミネムの言葉のつなぎ方やリズム感はどの曲もすばらしい。相当の語彙力なり文章力がないと、言葉とリズムを合わせるのは難しい。P!NK、リル・ウェイン、リアーナが参加。「ゴーイング・スルー・チェンジズ」はブラック・サバスの「チェンジズ」をサンプリング。「ノット・アフレイド」収録。
7
THE MARSHALL MATHERS LP2
2013年。アルバムタイトルは2000年に発表したアルバムの続編であることを示すが、これには賛否があるだろう。過去の作品の続編を作ることは、過去の栄光を再現したいと考えるアーティストがすることだからだ。オープニング曲の「バッド・ガイ」には「スタン」が出てくるので、エミネムにとってこのアルバムが続編であるという意識は強いとみられる。メロディアスな曲が多く、サビは耳に残りやすい曲が多い。「ライム・オア・リーズン」はゾンビーズの「二人のシーズン」を使い、エミネムもかなり歌う。「ラヴ・ゲーム」はウエイン・フォンタナとマインドベンダーズの「ゲーム・オブ・ラブ」を使う。「ザ・モンスター」はリアーナ、「ラヴ・ゲーム」はケンドリック・ラマーが参加する。「ラップ・ゴッド」はエミネムの高速ラップが出てくる。男性的なロックを聞いているかのような力んだ発音、発声が多い。
8
RIVIVAL
2017年。ビヨンセ、アリシア・キーズ、エド・シーラン等と共演。歌詞は社会・政治問題、ファンへの呼び掛け、元妻と娘への謝罪、自己顕示の4種類に分類できる。ビヨンセと共演したオープニング曲の「ウォーク・オン・ウォーター」は、聞き手に対して私は神ではない普通の人間と言い、「ビリーヴ」は自分の道を信じろと言う。「クロラセプティック」「オフェンデッド」は自己顕示。「アンタッチャブル」は人種差別、エド・シーランと共演する「リヴァー」は中絶を取り上げる。「リマインド・ミー」はジョーン・ジェット&ザ・ブラック・ハーツの「アイ・ラヴ・ロックンロール」をサンプリングしており、女性を小馬鹿にしている。「ヒート」もこれに近い。アリシア・キーズと共演した「ライク・ホーム」はトランプ米大統領をヒトラーと同一視し、明確に変革を訴える。歌詞はアリシア・キーズが主導している。「バッド・ハズバンド」「キャッスル」「アロウズ」はエミネムが元妻と娘に謝る曲。「ニード・ミー」も同系統。「トラジック・エンディングス」はエミネムの個人的なエピソード。「ノーホエア・ファスト」は「ビリーヴ」に近い。ジャケットは星条旗とエミネムの苦悩や後悔が描かれており、過去の自分と現在のアメリカを共に思い悩んでいることが現在のエミネムだと言いたいのだろう。その意味では、最も重要な曲は「ライク・ホーム」、それに準じる曲が「アンタッチャブル」「キャッスル」等になる。「アンタッチャブル」で人種差別を取り上げながら、女性蔑視的な曲も収録しているのは批判があるだろう。「アイ・ラヴ・ロックンロール」をサンプリングしてヒップホップのファン以外にも訴求しそうな「リマインド・ミー」が、このアルバムを代表するとは言えない歌詞になっているのはもったいない。別の歌詞を構築した方がよかった。
 
DEVIL'S NIGHT/D12
2001年。エミネムを含む6人組ヒップホップグループ。エミネム以外の5人はアフリカ系。エミネムの声はやや高いので、登場すればすぐ分かる。どのアーティストがうまいかといったことは分からないし、そうした聞き方もしないが、そもそもエミネムが有名にならなければ注目されなかったグループではないか。歌詞はエミネムに比べれば品がない。サンプリングもポピュラーな曲はなく、広がりを持ちにくいアルバムだ。
 
D12 WORLD/D12
2004年。サビにメロディーがあったり、バックの演奏がメロディアスだったりして、格段に聞きやすくなった。エミネムのサウンドに近くなったと言ってもよい。

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