BUBBLEGUM POP

  • バブルガム、またはバブルガム・ポップは、1960年代後半から1970年代初めにかけて流行したサウンド。
  • 60年代後半は、ビートルズとボブ・ディランをきっかけに若年層向け音楽の自作自演が一般化し、アーティストが職業作曲家による曲を録音することは時代遅れになっていたが、バブルガム・ポップスでは職業作曲家やプロデューサーが重要な働きを担っていた。
  • アーティストの神格化が強まった現在では重要視されないジャンルだが、90年代に入り、優れたアレンジやポップさで再評価されている。
  • 職業作曲家やプロデューサーが主導する曲では、ホーンセクションやストリングスがふんだんに使われ、アレンジが優れた曲が多い。
  • 代表的グループは1910フルーツガム・カンパニー、オハイオ・エクスプレス、アーチーズなど。

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BUBBLEGUM CLASSICS VOLUME ONE

1995年。オハイオ・エクスプレス「ヤミー・ヤミー・ヤミー」、カフ・リンクス「トレイシー」、エジソン・ライトハウス「恋のほのお」など、このジャンルを代表する曲を収録。1910フルーツガム・カンパニーは「インディアン・ギヴァー」が収録されている。キースは「98.6」ではなく「嘘はつかない」を収録。ペパーミント・レインボーの「そよ風の日曜日」、シャノンの「アベーガヴェニー」のアレンジは秀逸。アメリカで編集された企画盤なので、ボビー・シャーマンの「いとしのジュリー」など、日本ではバブルガムとは認識されていない曲も含まれている。日本盤の解説は収録曲の解説のみで、バブルガムの意義については触れられていない。

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BUBBLEGUM CLASSICS VOLUME TWO

1995年。1910フルーツガム・カンパニー「サイモン・セッズ」、ホワイト・プレインズ「恋に恋して」、エジソン・ライトハウス「恋するペテューラ」、ボビー・ブルーム「モンテゴ・ベイ」、フライング・マシーン「笑って!ローズ・マリーちゃん」などを収録。ジー・プロフェッツの「プレイガール」、ファン&ゲームスの「グルーヴィエスト・ガール・イン・ザ・ワールド」はいいアレンジだ。ブラザーフッド・オブ・マンは男性2人、女性2人で、ボーカルハーモニーもアバに近い。ロック・アンド・ロール・ダブル・バブル・トレイディング・カード・カンパニー・オブ・フィラデルフィア・19141の「バブル・ガム・ミュージック」収録。

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BUBBLEGUM CLASSICS VOLUME THREE

1996年。アーチーズ「シュガー・シュガー」、カウシルズ「空飛ぶ心」、オハイオ・エクスプレス「チュウイ・チュウイ」などを収録。ザ・クリークの「シュガー・オン・サンデー」はサイケデリック・ロック風。「チピ・チピ天国」はミドル・オブ・ザ・ロードではなくマック&ケイティを収録。ペパーミント・トロリー・カンパニーの「ベイビー・ユー・カム・ローリン・アクロス・マイ・マインド」はバブルガムというよりもソフトロックだろう。スウィートが収録されているのは違和感がある。

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BUBBLEGUM CLASSICS SOULFUL POP

1998年。アフリカ系アーティストによるバブルガム・ポップを収録。トニー・マコウレイ、ロジャー・クック、ロジャー・グリーナウェイらバブルガク・ポップス関係者が作曲に関わっている曲を含む。白人に比べ、ボーカルに力強さがある。モータウン時代のホランド・ドジャー・ホランドもバブルガム・ポップに近いアレンジだったので、70年前後のヒット曲も収録されている。チェアメン・オブ・ザ・ボードやビリー・オーシャンの選曲は避けるべきだったか。発売が1975年を過ぎた曲は、バブルガムとするには無理がある。

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BUBBLEGUM CLASSICS THE VOICE OF TONY BURROWS

1998年。トニー・バロウズがボーカルを取っている曲を18曲収録。エジソン・ライトハウス「恋のほのお」、ファースト・クラス「ビーチ・ベイビー」、ブラザーフッド・オブ・マン「二人だけの世界」、ピプキンズ「ギミー・ダッ・ディン」等を収録。ドミノ、タッチ、ウェスト・エンド・ボーイズ、マジックの曲は貴重。

THE BEST OF 1910 FRUITGUM CO./1910 FRUITGUM COMPANY

1998年。バブルガム・ポップの代表的グループ、1910フルーツガム・カンパニーのベスト盤。メンバーも人数も不定だが概ね4~8人。年代順に並んでおり、「サイモンセッズ」「ジャイアント・ステップ」「1,2,3,レッド・ライト」は1968年のヒット。69年以降はカセネッツ・カッツの作曲とアレンジが中心になり「インディアン・ギヴァー」「トレイン」がヒットしている。末期のシングルも収録しており、概略をつかむのに適したベスト盤だ。

THE BEST OF OHIO EXPRESS/OHIO EXPRESS

1998年。オハイオ・エクスプレスはバブルガム・ポップのバンド。アメリカ、オハイオ出身。5人編成。「ヤミー・ヤミー・ヤミー」「チュウイ、チュウイ」がヒットしている。29曲収録し、ブッダ・レコード時代のほとんどの曲を1枚に詰め込んでいる。どの曲もポップというより楽しい。「イエス・サー」は「ヤミー・ヤミー・ヤミー」のリズムを再利用したような曲。「ナイトタイム」はシュープリームスの「ベイビー・ラヴ」を思わせる。「サウサリート」は10ccのグレアム・グールドマンが作曲し、ボーカルもとっている。「カウボーイ・コンヴェンション」「ラヴ・イコールス・ラヴ」はジョン・カーターが作曲している。

WILL YOU BE STAYING AFTER SUNDAY/PEPPERMINT RAINBOW

1969年。女性2人、男性3人のバンド。アメリカ、ニューヨーク出身。女性はボーカル、男性はギター、ベース、ドラムを担当する。女性は姉妹で、一方はキーボードも演奏する。アルバムの11曲のうち女性は半数の曲でメインボーカルを取る。「そよ風の日曜日」が爽快な男女混声コーラスの曲として有名。アルバム・バージョンはシングルより1分長い。「ドント・ウェイク・ミー・アップ・イン・ザ・モーニング、マイケル」「アイ・ファウンド・アウト・アイ・ワズ・ア・ウーマン」も同系統の曲。「グリーン・タンバリン」はレモン・パイパーズのカバー。2005年にCD化、2008年にシングル収録曲10曲を追加して再発売され、アルバムとシングルの全てがCD化された。シングルのみの「ユーアー・ザ・サウンド・オブ・ラブ」「グッド・モーニング・ミーンズ・グッドバイ」「ドント・ラブ・ミー・アンレス・イッツ・フォーエバー」も女性ボーカルを生かした爽快な曲。

THE COWSILLS/THE COWSILLS

1967年。カウシルズは母と息子4人のグループ。アメリカ出身。息子4人がギター、ベース、ドラム、キーボードを演奏する。「雨に消えた初恋」「空飛ぶ心」「ヘア」がヒットしている。スタジオ録音のアルバムは5枚発表。このアルバム発表当時は5人編成。メンバーはほぼ固定され、作詞作曲もするので、バブルガム・ポップのグループとは言えない。バンドサウンドを基本とし、コーラスとハープで装飾していく。変声期前の男子がいるためコーラスは音域が広くとれ、高音域が多声にも厚い単声にもできた。「明るい気持で」もいい曲だ。

WE CAN FLY/THE COWSILLS

1968年。2枚目のアルバム。さらに下の弟と妹が加入し7人編成。オープニング曲の「空飛ぶ心」がヒットしている。ストリングス、ホーンセクションを前作よりも多用し、華麗になっている。ビートルズの影響も受けている。「グレイ、サニー・デイ」もいい曲。アップテンポの曲がもう少しあればよかったか。

THE BEST OF THE COWSILLS/THE COWSILLS

1968年。ベスト盤。3枚目のアルバム「嘆きの船長」の後に出ている。「グレイ、サニー・デイ」以外の13曲は全てシングル盤に収録された曲。「インディアン・レイク」はバブルガム・ポップ風だ。「ヘア」収録。

CHIRPY CHIRPY CHEEP CHEEP/MIDDLE OF THE ROAD

1970年。イタリアでのデビュー盤。ミドル・オブ・ザ・ロードはイギリスのポップなバンド。女性ボーカル、ギター、ベース、ドラムの4人編成。70年にイタリアでデビューした後、イギリスでデビューし、70年代前半にヒット曲を出した。オープニング曲の「チピ・チピ天国」がヒットし、オムニバス盤の定番となっている。女性ボーカルと男性3人のコーラスを生かし、多くの曲に高音のボーカルハーモニーを付けている。イタリア盤ではサイモンとガーファンクルの「コンドルは飛んで行く」、ダイアナ・ロスの「エイント・ノー・マウンテン・ハイ・イナフ」、ロックミュージカル「ジーザス・クライスト・スーパースター」の「スーパースター」をカバーしている。

CHIRPY CHIRPY CHEEP CHEEP/MIDDLE OF THE ROAD

1971年。イギリスでのデビュー盤。邦題「チピ・チピ天国」。ホリーズの「迷える僕」、クリスティーの「イエロー・リバー」をカバー。「迷える僕」のコーラスはホリーズほどの厚みがなく、女性ボーカルの低音部が弱くなる。「イエロー・リバー」は手拍子、タンバリン、ピアノを加え、ポップになっている。「おかしな、おかしな歌合戦」収録。日本盤はジャケットが異なる。

ACCELERATION/MIDDLE OF THE ROAD

1972年。前作よりもコーラスの付け方がうまくなっている。「サクラメントは夢の町」「すてきなU.S.A」が収録され、両方ともシングルになっているため、アメリカを意識したアルバムかもしれない。「サンソンとデライラ」は旧約聖書の「サムソンとデリラ」の物語。「OH!それそれ」「オン・ジス・ランド」「もうちょっと解って」収録。

DRIVE ON/MIDDLE OF THE ROAD

1973年。アルバム3枚連続でオープニング曲がシングルになった。このアルバムでは「イエロー・ブーメラン」がヒットしている。アバがデビューしてきたのでミドル・オブ・ザ・ロードにとっては追い風だったが、このアルバムでイギリスでの活動を縮小した。74年から76年まで1枚ずつアルバムを出して活動を停止している。「ボトムス・アップ」収録。

MIDDLE OF THE ROAD COLLECTION/MIDDLE OF THE ROAD

1999年。ベスト盤。イギリス盤の3枚のアルバムから選曲。マーサ・リーヴス&ザ・ヴァンデラスの「ウィル・ユー・スティル・ラヴ・ミー・トゥモロー」のカバーを収録している。

THE BEST OF/MIDDLE OF THE ROAD

2002年。ベスト盤。イギリス盤の1枚目と2枚目から16曲を選曲。

DON'T YOU KNOW IT'S BUTTERSCOTCH/BUTTERSCOTCH

1971年。邦題「そよ風の二人」。バブルガム・ポップの作曲家チームの3人が結成したグループ。唯一のアルバム。クリス・アーノルド、デヴィッド・マーチン、ジェフ・モローは、アーノルド・マーチン・モローとしてカセネッツ・カッツやクック・グリーナウェイ、トニー・マコーレイ、ジョン・マクレオドに次ぐ実績を残している。ストリングスが流麗で、ボーカルにもくせがなく、ドラムを含むライト・オーケストラをバックに歌っているようなサウンドだ。女性コーラスも他のグループより整合感が高い。

PICKETTYWITCH/PICKETTYWITCH

1970年。ファウンデーションズ「恋の体当たり」、フライング・マシーン「笑って!ローズ・マリーちゃん」、等のヒット曲を作曲しているトニー・マコーレイとジョン・マクレオドが関わり、ジョン・マクレオドがプロデュースしたバンド。ボーカルは女性、他の5人は男性。イギリス出身。「恋はフィーリング」がヒットしている。アレンジはジョン・マクレオド。オープニング曲と「アイル・セイ・バイ・バイ」「トゥー・ハーツ・アー・ベター・ザン・ワン」は男性が歌うが、それ以外は女性が歌う。バンドサウンドを基本としたのか、ストリングスやホーンセクションは薄めだが「アイル・セイ・バイ・バイ」「トゥー・ハーツ・アー・ベター・ザン・ワン」等はポップだ。「テイク・アウェイ・ジ・インププリネス・トゥー」「ベイビー・アイ・ウォント・レット・ユー・ダウン」はモータウン風ポップス。「ウォルド・P・エマーソン・ジョーンズ」はアーチーズのカバー。「サマータイム・フィーリング」はエジソン・ライトハウスの「恋のほのお」を女性が歌っているような曲。「恋はフィーリング」はボーナストラックとして収録。「サウンド・オブ・サイレンス」はサイモンとガーファンクルのカバー。「あの懐かしい気持ち」「涙の面影」「永すぎた春」収録。

SPECIAL DELIVERY/POLLY BROWN

1975年。ピケティウィッチのボーカルだったポリー・ブラウンの2枚目のソロアルバム。ヒットした「こころウキウキ」を収録している。「こころウキウキ」はシングル盤より長い。75年に発表されているので、サウンドはパーカッションとストリングスが多くなり、コーラスは整合感が高い。フィリー・ソウルやディスコへの意識は当然あるだろう。アルバムタイトル曲、「ショット・ダウン・イン・フレイムス」、ボーナストラックの「ドゥ・ユー・ビリーヴ・イン・ラヴ・アット・ファースト・サイト」も「こころウキウキ」に近いサウンド。「ラヴ・バグ(ロング・ヴァージョン)」はギターがローリング・ストーンズの「サティスファクション」を思わせる。

FLIGHT RECORDER/THE FLYING MACHINE/PINKERTONS COLOURS

1997年。フライング・マシーンと前身バンドのピンカートンズ・カラーズの曲を集めた企画盤。2枚組。フライング・マシーンはイギリスのバンド。5人編成。曲の多くをトニー・マコーレイとジョン・マクレオドが作曲している。「笑って!ローズ・マリーちゃん」がヒットしている。1枚目はフライング・マシーンの唯一のアルバムの全曲とシングル盤の6曲を収録。2枚目はピンカートンズ・カラーズのシングル盤収録曲と未発表曲13曲を収録。ピンカートンズ・カラーズは67年から69年に録音されている。イギリスでもアメリカでもポピュラー音楽が大きく動いていた時期なので、60年代半ばのリバプール・サウンドに近い曲調やポップさ以外に特徴がない曲では厳しかったかもしれない。「シャイン・ア・リトル・ライト」は70年代半ばのようなアレンジ。

DOWN TO EARTH WITH THE FLYING MACHINE/THE FLYING MACHINE

1969年。「フライト・レコーダー」の1枚目と同じ内容だが、イギリス盤に合わせているので曲順が異なる。ボーナストラックの6曲も含めて同じ曲が収録されているので、公式に発表された曲は網羅しているのではないか。「あの懐かしい気持ち」はピケティウィッチの「恋はフィーリング」と同じ曲。「急いで!ベイビーちゃん」は「笑って!ローズ・マリーちゃん」よりもアップテンポ。職業作曲家の曲を集めているのでアルバムに統一感はないが、トニー・マコーレイ、ジョン・マクレオド、ロジャー・クック、ロジャー・グリーナウェイが関わるとストリングスやホーンセクションが使われてポップになる。クック・グリーナウェイが作曲した「イエス・アイ・アンダースタンド」はヒットしてもおかしくないポップな曲。