TOTO

  • アメリカのロックバンド。アダルト・オリエンテッド・ロックに近い都会的なサウンドで知られる。
  • 中心人物はギターのスティーヴ・ルカサー、重要人物はボーカルのボビー・キンボール、ジョセフ・ウィリアムス、ファーギー・フレデリクセン、ベースのマイク・ポーカロ、ドラムのジェフ・ポーカロ、キーボードのスティーヴ・ポーカロ、デイヴィッド・ペイチ。
  • メンバーが関わった他のアーティストの作品は、多くがアダルト・オリエンテッド・ロックの重要作となっている。
  • 代表作は「聖なる剣」「宇宙の騎士」「第七の剣」、代表曲は「アフリカ」「ロザーナ」「ホールド・ザ・ライン」「子供の凱歌」「パメラ」。

1
TOTO

1978年。邦題「宇宙の騎士」。キーボードが2人いる6人組。メジャー化に成功したアメリカン・プログレッシブ・ハードロックのバンドとしては遅いデビューだった。同時に最もアダルト・オリエンテッド・ロック寄りの音でもあった。日本では特にオープニングのインスト曲「子供の凱歌」が人気。「愛する君に」「ジョージー・ポーギー」「ホールド・ザ・ライン」がヒットした。ほとんどの曲をキーボードのデビッド・ペイチが作曲している。4人がボーカルをとっていて、メーン・ボーカルではないギターのスティーブ・ポーカロやデビッド・ペイチもリード・ボーカルをとっている。ボビー・キンボールが一番うまいか。「ガール・グッドバイ」はいい曲。

2
HYDRA

1979年。「99」がヒット。普通のファンになじみやすい曲は減り、どの曲も少し芸術性を持たせている。したがって、デビュー盤ほど分かりやすい曲は入っていない。オープニング曲もTOTOにしては大作の7分。「セント・ジョージ&ザ・ドラゴン」「ホワイト・シスター」収録。

3
TURN BACK

1981年。ハードさが増し、曲も親しみやすくなった。TOTOのアルバムの中では、最もハードロック寄りと思われる。「グッドバイ・エリノア」収録。初期のアルバムの中で、このアルバムだけシングルヒットが出なかった。

4
TOTO IV

1982年。邦題「聖なる剣」。「ロザーナ」が全米2位、「アフリカ」が1位。アルバムは売上枚数、チャートともバンド史上最高成績。「アフリカ」はタイトルどおりアフリカのリズムを導入している。コンテンポラリーな音になった。ギターのスティーブ・ルカサーの活躍度が大きくなっている。

5
ISOLATION

1984年。ボーカルのボビー・キンボールが抜け、トリリオンのファーギー・フレデリクセンが加入。ボーカル・オーディションで最後まで争ったのはMR.BIGのエリック・マーティンだったという。ドラムを中心に音がクリアになったため、線の細いファーギー・フレデリクセンの声はサウンドに合っている。「チェンジ・オブ・ハート」はいい曲。「ストレンジャー・イン・タウン」はロック・バンドとしてのサウンドの生々しさを抑え、機械的な音にしている。

DUNE

1984年。映画「砂の惑星」のサウンドトラック。

6
FAHRENHEIT

1986年。ボーカルがジョセフ・ウィリアムスに交代。サウンド傾向が「聖なる剣」のころに戻った。ジョセフ・ウィリアムスはファーギー・フレデリクセンに比べれば表現力は豊か。ほとんどの曲でパーカッションが入る。「ドント・ストップ・ミー・ナウ」はマイルス・デイヴィスが参加するインスト曲。

7
THE SEVENTH ONE

1988年。邦題「第七の剣」。イエスのボーカル、ジョン・アンダーソンが参加している。ジャケットやサウンドから、「聖なる剣」を目指したことが分かる。「パメラ」「ストップ・ラヴィング・ユー」がヒット。ハードなギターと音色の豊かなキーボードがうまく機能している。

8
PAST TO PRESENT 1977-1990

1990年。未発表曲を4曲収録したベスト盤。ボーカルのジョセフ・ウィリアムスが抜け、新曲を歌っているのはジャン・ミッシェル・バイロン。「ターン・バック」と「アイソレーション」の曲は入っていない。新曲は「第七の剣」の路線。

9
KINGDOM OF DESIRE

1993年。邦題「欲望の王国」。ボーカルはギターのスティーブ・ルカサーが兼任することになった。作曲者がメンバー個人ではなくバンドになり、日本盤に初めてボーナストラックがついた。ボーナストラックは初めてのカバーで、ジミ・ヘンドリクスの「リトル・ウィング」をやっている。ギターが中心的存在になっているが、ハードロックほどハードではない。

 
ABSOLUTELY LIVE

1993年。初のライブ盤。2枚組。ドラムのジェフ・ポーカロが死亡し、サイモン・フィリップスに交代。ギターのスティーヴ・ルカサーがボーカルを兼任し、バンドとしてはベース、ドラム、キーボードの4人編成となっている。これにパーカッション、男性コーラス1人、女性コーラス2人が加わる。スティーヴ・ルカサーの声はやや低いので、ジョセフ・ウィリアムスが歌っていた高音部分は女性コーラスの2人が担っている。「ロザーナ」は観客の合唱がうまく入っている。最後の曲は亡くなったジェフ・ポーカロをしのんで、ビートルズの「ウィズ・ア・リトル・ヘルプ・フロム・マイ・フレンズ」が演奏される。

10
TAMBU

1995年。ボーカルがハイトーンを出せなくなったため、曲の抑揚が抑え気味になり、高揚感に欠ける。歌い方もうまいとは言えず、平板だ。刺激のないアダルト・オリエンテッド・ロックになっている。

DRAG HIM TO THE ROOF

1995年。シングル盤。「アイ・ウィル・リメンバー」は途中でフェードアウトするエディットバージョン。マイルス・デイヴィスが参加したインスト曲「ドント・ストップ・ミー・ナウ」を収録している。

 
TOTO XX:1977-1997

1998年。企画盤。10曲はジェフ・ポーカロ時代の未発表曲。3曲はサイモン・フィリップス加入後のライブ。高音ボーカルがいないメンバーではコーラスが難しいらしく、「アフリカ」では女性コーラスが参加している。「ミス・サン」はボズ・スキャッグスの曲。全盛期のころの曲が多い。

11
MINDFIELDS

1999年。ボーカルにボビー・キンボールが復帰。多数の外部作曲家を使っている。曲がすばらしく、少なくともベスト盤以降では傑作。従来のアダルト・オリエンテッド・ロック路線だけでなく、プログレッシブ・ロックや「聖なる剣」のころのようなホーン・セクションの入った曲もある。個々の曲も長くなり10分弱や2部構成で7分の曲もある。ハイ・トーンのボーカルがいると、ほかのボーカルとの対比ができるので作品全体のメリハリもつきやすい。

 
LIVEFIELDS

1999年。ライブ盤。5人編成で、ボーカルはボビー・キンボール。ギター・ソロ、ドラム・ソロ、キーボード・ソロが独立した1曲として入っており、ボーナスCDも入れると19曲で約90分。日本盤には「子供の凱歌」がボーナストラックで収録されている。曲はデビューアルバムから「マインドフィールズ」までほぼまんべんなく選ばれている。「ロザーナ」「ホールド・ザ・ライン」はやはり人気だ。

 
THROUGH THE LOOKING GLASS

2002年。全曲カバーによる企画盤。カバーされているのはボブ・マーリー、スティーリー・ダン、ビートルズ、アル・グリーン、スティービー・ワンダー、ハービー・ハンコック、エルトン・ジョン、クリーム、アニマルズ、エルビス・コステロ、ボブ・ディラン。スティーリー・ダンの「菩薩」とエルトン・ジョンの「バーン・ダウン・ザ・ミッション」はいいアレンジ。クリームの「サンシャイン・ラブ」はスティーブ・ルカサーのギターがすばらしい。

GREATEST HITS...AND MORE

2002年。ベスト盤。

LIVE IN AMSTERDAM

2003年。ライブ盤。「スルー・ザ・ルッキング・グラス」のときのライブを収録しているため、ビートルズの「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」とスティーリー・ダンの「菩薩」、テンプテーションズの「悲しいへだたり」のカバーを収録している。日本盤は海外盤より5曲多く収録した2枚組となっている。追加された5曲は「デヴィッド・ペイチ・ソロ」「デューン」「ドント・ストップ・ミー・ナウ」「悲しいへだたり」「ホワイト・シスター」で、ほかに「バンド紹介」も1曲に数えられている。多くの曲を演奏しようという意図で行われているライブのため、曲によっては短く、1分半、1分以下の曲が多数ある。ボーカルのボビー・キンボールは高音の声が必要な曲で歌うが、安定感はやや欠ける。スティーヴ・ルカサーとデヴィッド・ペイチが中心のバンドであることを再確認させるライブ盤だ。

12
FALLING IN BETWEEN

2006年。シンセサイザー、パーカッション、抑制の利いたハードさといった、かつてのTOTOの個性は薄くなっている。しかし、消えているわけではない。これまでと最も異なっているのはギターの音で、時流に乗ったディストーションがかかっている。オルガンとギターが楽器の中心となっているので、バンドのサウンドが持続音主体になり、TOTOのイメージは大きく変わる。曲によってホーン・セクションが入る。ジョセフ・ウィリアムス、スティーブ・ポーカロ、ジェイソン・シェフのほか、ジェスロ・タルのイアン・アンダーソンがフルートで参加。時折過去の名曲に近いサウンドが出てくる。

13
XIV

2015年。邦題「TOTO XIV~聖剣の絆」。ボーカルは「第七の剣」のジョセフ・ウィリアムス、ドラム以外は主にデビュー時のメンバーで録音。ジョセフ・ウィリアムス、スティーヴ・ルカサー、デイヴィッド・ペイチ、スティーヴ・ポーカロ等が作曲し、共作ではなく個人で持ち込んだとみられる曲は持ち込んだ者がボーカルをとっている。1980年代に活躍した他のバンドと同じように、80年代とそれほど変わらないサウンドを提示するが、印象的な曲は減った。スティーヴ・ポーカロが曲に切り込むようなシンセサイザーを使わなくなり、ドラムがリズムの変化を出さなくなった。スティーヴ・ルカサー、スティーヴ・ポーカロ、デイヴィッド・ペイチが狭い音域でボーカルをとると、メロディーの抑揚が小さくならざるを得ず、ジョセフ・ウィリアムスが全曲を歌う方が印象も異なるのではないか。バンドが継続していることを確認するためのアルバム。