SINNER

  • ドイツのハードロック、ヘビーメタルバンド。4、5人編成。ボーカル兼ベースのマット・シナーを中心とする。
  • 80、90年代はアメリカの流行に追随したサウンドだが、常にタイミングが遅れており、大きなヒットにならなかった。
  • 2000年代はヘビーメタルのサウンドになり、ヨーロッパの流行追随となっている。
  • マット・シナーはプライマル・フィアのメンバーでもある。

1
WILD 'N' EVIL

1982年。ベース兼ボーカルのマット・シナーを中心とする4人編成。ギターは2人。西ドイツ出身。1982年当時、ヨーロッパで人気のあったハードロック・バンドをなぞったサウンドだ。バンド編成がシン・リジーと同じで、「ヒート・オブ・ザ・ナイト」「シリー・シング」はその影響が大きい。オープニング曲はオジー・オズボーンの「クレイジー・トレイン」を思い出す。ドラムのメロディック・タムがヴァンデンヴァーグのように(高い音で)響く。

2
FAST DECISION

1982年。メロディアスなハードロックで、前作と同様、ギターのハーモニーを主軸にしている。マット・シナーのボーカルの表現力も上がっている。「マジック」「チェインズ」はいい曲だ。シン・リジーのような曲も残っている。

3
DANGER ZONE

1984年。公式のデビュー盤とされているアルバム。編成は同じ。マット・シナーのボーカルが力強くなり、曲はアップテンポだ。ジャケットやサウンドがアメリカのハードロックを手本にしていることを示している。

4
TOUCH OF SIN

1985年。ギターとドラムが交代。ギターはアクセプトのハーマン・フランク。ハードロックよりもヘビーメタル寄りのサウンド。「バッド・ガール」「トゥー・レイト・トゥ・ランナウェイ」はいい曲だ。マット・シナーのボーカルが発狂型に近い。

5
COMIN' OUT FIGHTING

1986年。ギター2人が交代。ギターの1人はマッド・マックスのエンジェル・シュライファーとなっている。キーボードを使ったハードロックで、オープニング曲の曲調がアルバムの雰囲気をある程度物語っている。キーボードを弾いているのはレインボーのドン・エイリー。「ファスター・ザン・ライト」「ロスト・イン・ア・ミニット」はキーボードの活躍が大きい。コーラスでマイケル・ヴォスが参加している。「レベル・イエル」はビリー・アイドルのカバー。

6
DANGEROUS CHARM

1987年。前作に続きキーボードを使ったハードロックのサウンド。当時ドイツではボンファイアがボン・ジョヴィのようなサウンドで成功し、スコーピオンズに次ぐハードロック・バンドとなっていた。ジューダス・プリーストが「ターボ」でギター・シンセサイザーを取り入れ、グレイヴ・ディガーがディガーととなってハードロックに転向した。ハードロック、ヘビーメタルのアーティスト全体がポップなサウンドを志向していた。このアルバムも同様の傾向を示す。ほぼ全曲にキーボードが使われ、コーラスも聞きやすい。「エヴリバディ」はいいバラード。「ファイト・ザ・ファイト」はいわゆるジャーマン・メタルのサウンド。

BACK TO THE BULLET/MAT SINNER

1990年。マット・シナーのソロアルバム。

7
NO MORE ALIBIS

1992年。キーボードを含む5人編成となった。バック・コーラスの女性1人、男性2人が参加しており、男性の2人はガンマ・レイのラルフ・シーパーズとウリ・ジョン・ロートのマイケル・フレクシグ。キーボード奏者が加入しても前作、前々作よりキーボードの量は少ない。プロデューサーが単独で作曲した「ソー・エキサイタブル」はファンク風のロックン・ロールだ。メンバー5人のうち4人が作曲にかかわっており、組み合わせによって作風が異なる。多彩になっているとも言えるが、志向が拡散しているとも言える。

8
RESPECT

1993年。ギターが1人抜け4人編成。前作よりさらに多彩になり、アコースティック・ギター、キーボードをよく使う。「ノー・モア・アリバイズ」も「リスペクト」も「カミン・アウト・ファイティング」のサウンドを継承している。「ベッズ・アー・バーニング」はオーストラリアのミッドナイト・オイルのカバー。

THE BEST OF SINNER-NOISE YEARS

1994年。「デンジャー・ゾーン」から「デンジャラス・チャーム」までの4枚から選曲したベスト盤。日本のみ発売。

9
BOTTOM LINE

1995年。ギターが1人増え5人編成。加入したのはアレックス・バイロットだが、録音にはサンダーヘッドのヘニー・ウォルターも参加している。キーボードがほとんど出てこない曲がある。重厚なハードロック。コーラスも聞きやすい。サウンド全体がヘビーメタル仕様になっている。「アイ・キャント・ストップ・ザ・ファイア」はMR.BIGのエリック・マーティンが作曲している。

IN THE LINE OF FIRE

1995年。ライブ盤。

10
JUDGEMENT DAY

1996年。オープニング曲がインストになり、2曲目の序曲になっている。「ジャッジメント・デイ」はシナーとしては長い9分弱の曲。キーボード奏者がいるとはいえ、音としてキーボードが出てくるのは限定的で、サウンドの実態はヘビーメタルだ。全体の統一感も出てきた。全曲がマット・シナーとギター2人の共作となっている。

11
THE NATURE OF EVIL

1998年。これまでで最もハードなサウンドで、ギターはメロディーを演奏するというよりリズムを刻むという印象だ。ヨーロッパで流行していたメロディアスで重厚なヘビーメタルをやっている。ヨーロッパではこのアルバムがシナーとして最もヒットしている。

TREASURE THE WORKS 93-98

1998年。「リスペクト」から「ザ・ネイチュア・オブ・イーヴル」までのベスト盤。

THE SECOND DECADE

1999年。ベスト盤。「ボトム・ライン」から「ザ・ネイチュア・オブ・イーヴル」までの曲と新曲3曲を収録。ヨーロッパではこの時期がシナーの全盛期とされている。

EMERALD-VERY BEST OF SINNER

1999年。2枚組ベスト盤。

12
THE END OF SANCTUARY

2000年。ドラムがハロウィンのウリ・カッシュに交代。ギターはアレックス・バイロットとサンダーヘッドのヘニー・ウォルターとなった。作曲はマット・シナー単独か、アレックス・バイロット、ヘニー・ウォルター、エンジェル・シュライファーのいずれかと共作している。3人ともギターなので曲がギター中心になり、キーボードはほとんど出てこない。「ペイン・イン・ユア・ネック」は80年代後半のアクセプトのようなサウンド。

13
THERE WILL BE EXECUTION

2003年。ギターのアレックス・バイロットが抜け、トム・ナウマンが復帰、ドラムもウリ・カッシュが抜け前任者が戻った。ギター2人が中心となるヘビーメタルで、前作と同様のサウンド。メガデスやプライマル・フィアに近い。日本盤ボーナストラックの「ホエアエヴァー・アイ・メイ・ローム」はメタリカのカバー。

14
MASK OF SANITY

2007年。ギターのヘニー・ウォルター、ドラムのフリッツ・ランドウが交代。11曲のうち5曲をメンバー以外のアーティストと作曲している。キーボードがやや増え、曲調が広がった。「ダイアリー・オブ・イーヴル」はシン・リジーのような曲。「サンダー・ロー」はオルガンとピアノが印象的に使われる。「アンダー・ザ・ガン」はラルフ・シーパーズが遠くで高音のバック・コーラスをつけている。ボーナストラックの「ベイビー・プリーズ・ドント・ゴー」はシン・リジーのカバー。「キャント・スタンド・ザ・ヒート」は1988年の作曲。

15
CRASH&BURN

2008年。キーボード奏者が脱け4人編成。ギターも1人入れ替わっている。1990年代後半から2000年代にかけて、バンドのメンバーを固定するという認識が(サンプリングやデジタル編集を常とするヒップホップ、クラブ・ミュージックの流行で)世界的に薄れ、シナーもアルバムごとに録音メンバーが変わっている。ハードロック、ヘビーメタルの範囲内に収まった上で、多彩な曲を収録している。「ブレイク・ザ・サイレンス」はメガデスのようだ。「レヴォリューション」はカウベルと女性コーラスを使うロックン・ロール。「リトル・ヘッド」はブッチ・ウォーカーが在籍したマーヴェラス3のカバー。「コネクション」はほほえましいほどシン・リジーにそっくりな曲。

16
ONE BULLET LEFT

2011年。