ROY WOOD/WIZZARD

  • ロイ・ウッドはジェフ・リンとともにエレクトリック・ライト・オーケストラ結成の中核的アーティスト。
  • 一般的なポピュラー音楽の楽器のほとんどを演奏できる。ソロアルバムはコーラスも含め、多重録音ですべての楽器を1人で演奏する。
  • 60年代アメリカのフィル・スペクター、ドゥーワップ、イギリスのロックンロール、グラムロックを好む。
  • アルバムに収録されていないシングル曲のヒットが多数ある。

1
BOULDERS/ROY WOOD

1972年。ロイ・ウッドがすべての楽器を演奏して多重録音したアルバム。1968年に録音されている。ギター、ベース、ドラム、キーボードのほか、リコーダー、チェロ、コントラバス、サックス、バンジョー。コーラスも1人で多重録音し、「ディア・イレイン」などではテープの高速回転も使う。「オール・ザ・ウェイ・オーヴァー・ザ・ヒル」はドゥーワップ風のコーラスが入る。「ロック・ダウン・ロウ」はポップなロックンロール。「ナンシー・シング・ミー・ア・ソング」はビートルズを思わせる。「ホエン・グランマ・プレイズ・ザ・バンジョー」はバンジョーが活躍するブルーグラス。「ロック・メドレー」の「ロッキン・シューズ」「シーズ・トゥー・グッド・フォー・ミー」はフォークロック、カントリー・ロック風。日本盤は1973年発売。当時の邦題は「ミュージシャンはマジシャン」。

2
WIZZARD BREW/WIZZARD

1973年。8人編成のバンドを結成。ロイ・ウッドはボーカル兼ギターほか、他の7人はベース、キーボード、チェロ、ドラム2人、サックス2人。実際にはチェロとテナーサックスを多く使う。6曲のうち「ミート・ミー・アット・ザ・ジェイルハウス」はテナーサックスのソロを含む13分半の曲、他に9分台、7分台の曲があり、アルバムにしか収録できない曲とシングルでも出せる曲の区別をつけているようだ。「ミート・ミー・アット・ザ・ジェイルハウス」のギターソロはサイケデリック・ロックの影響がある。「ジョリー・カップ・オブ・ティー」は鼓笛隊の行進曲。多くの曲でロイ・ウッドのボーカルやドラムの音が割れており、聞きやすい音質にすることに腐心しないようだ。

3
EDDIE AND THE FALCONS/WIZZARD

1974年。架空のロックバンド「エディ・アンド・ザ・ファルコンズ」が演奏するという体裁をとっている。演奏するのは60年代のロックンロール、ポップスで、本歌は分かりやすい。「ユー・ガット・ミー・ランニン」はボビー・ヴィー、「クライン・オーヴァー・ユー」はエルヴィス・プレスリー、「エヴリデイ・アイ・ワンダー」はデル・シャノンだろう。「ストーリー・オブ・マイ・ラヴ」はフィル・スペクターかもしれないが、シングル曲の「シー・マイ・ベイビー・ジャイヴ」の方がそれに近い。

4
MUSTERD/ROY WOOD

1975年。「ボールダーズ」に続き1人で多重録音している。「ザ・レイン・ケイム・ダウン・オン・エヴリシング」はルネッサンスのアニー・ハズラム、「ゲット・オン・ダウン・ホーム」はエヴァリー・ブラザーズのフィル・エヴァリーがいずれもボーカルで参加している。楽器はすべてロイ・ウッド。アルバムタイトル曲と「ユー・シュア・ゴット・イット・ナウ」はアンドリュース・シスターズかボズウェル・シスターズかというような40年代ラジオポップス。これもロイ・ウッドがボーカルをとっているなら驚くべき表現の幅だ。50、60年代ポップスへの憧憬も健在。日本盤は1976年発売。

5
SUPER ACTIVE WIZZO/ROY WOOD WIZZO BAND

1977年。ロイ・ウッドのほか、ギター、ベース、ドラム、キーボード、サックス、トロンボーンの7人編成。ボーカルがある部分はロック、ポップスの曲調になり、ギターやサックスの部分はウェストコースト・ジャズ、あるいはそれに影響を受けたロック。ドラムの奏法がジャズにはなっていないため、ジャズ寄りにしようとしてもロックのリズムに聞こえてしまう。6曲のうち11分台が2曲ある。

6
ON THE ROAD AGAIN/ROY WOOD

1979年。バンドサウンドであることは変わらないが、同時に演奏されている楽器の数は減っている。金管楽器もチェロもこれまでどおり使われるが、フィル・スペクター風女性コーラスはない。ドゥーワップ風コーラスは残っている。「カラフル・レディー」は「スーパー・アクティヴ・ウィゾ」に収録されていてもいい曲。オープニング曲はアバの影響がある。

7
STARTING UP/ROY WOOD

1986年。80年代特有のエレキドラム風ドラムに、70年代のアルバムと同様のホーンセクションを乗せるが、キーボード、シンセサイザーの量は多くなった。ロイ・ウッドがコーラスを伴わずにボーカルメロディーを引っ張る。70年代のアルバムとの違いは、リズムがダンス音楽の体になっていないことで、聞いて楽しく感じる曲が少なくなっていることだ。「レイニング・イン・ザ・シティ」は60年代のガールズグループのサウンド。「アンダー・ファイア」はエレキドラムとシンセサイザーを中心とする典型的80年代ポップス。多くの曲にハードロック風ギターソロも入る。

THROUGH THE YEARS

1996年。ザ・ムーヴからエレクトリック・ライト・オーケストラ、ウィザード、ソロ時代のヒット曲を18曲収録。ザ・ムーヴは4曲。エレクトリック・ライト・オーケストラは「10538序曲」のみ。

EXOTIC MIXTURE/ROY WOOD

1999年。ロイ・ウッドのソロでのシングル曲、シングル盤しか出ていないバンドの曲を集めた企画盤。2枚組で38曲収録。

SINGLES A'S AND B'S/WIZZARD

1999年。邦題「シングルズ」。ウィザード時代のシングル集。18曲収録。全曲が1972年から75年の発売で、サウンドは50、60年代のアメリカのポップス、ロックンロールを模倣したポップス。最初の4曲はヒットしている。「ザ・カールスバーグ・スペシャル」はチェンバロが活躍するインスト曲。「毎日がクリスマスだったら」収録。

MAIN STREET/ROY WOOD&WIZZARD

2000年。1976年に録音され、発売されなかったアルバム。タイトル曲の後半はジャズ風。「サックスマニアック」はインスト曲、「ザ・ファイアー・イン・ヒズ・ギター」も後半がギターソロで、これまでの50、60年代ポップス、ロックンロールとは曲調が異なる。録音時期が「マスタード」と「スーパー・アクティヴ・ウィゾ」の間にあることを考えれば自然な流れだと解釈できる。イギリスのロックの流行を考えれば、パンクが全盛のころに録音していることになるが、パンクの要素はほとんどない。