RAGE/AVENGER

  • ドイツのヘビーメタルバンド。3、4人編成。ボーカル兼ベースのピーヴィー・ワグナーを中心とする。
  • なめらかではないメロディーが逆に個性となっている。「サーティーン」からキーボードも取り入れている。
  • ハロウィン、ブラインド・ガーディアンと同時期から活動している歴史の長いバンド。

 
PRAYERS OF STEEL

1984年。アヴェンジャー名義でのデビュー盤。このアルバムが出たころ、アクセプトは「ボールズ・トゥ・ザ・ウォール」を出している。ドイツの中では、シナーやランニング・ワイルド、スティーラー並みに歴史が古く、ソドムやクリーター、ディストラクションはデビューしていない。それを考えると、ドイツで最もハードで攻撃的な音を出していたバンドだと言える。スラッシュメタルではなく、ハードロックでもなく、純粋なヘビーメタル。今のレイジに通じるとはいえ、メロディーは自然な流れで、デビュー作にしてはすばらしい出来。「バトルフィールド」は「エクステンデッド・パワー」で「ボトルフィールド」として再録音されている。

 
DEPRAVED TO BLACK

1985年。アヴェンジャー名義での4曲入りミニ・アルバム。新曲2曲はスピーディー。ソドム、クリーター、ディストラクションがこの年一斉にデビューした影響なのか。残り2曲はライブ。

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REIGN OF FEAR

1986年。前身バンドであるアヴェンジャーから改名してデビュー。ボーカル兼ベースのピーヴィー・ワグナーを中心とするギター2人の4人組。ドラムはヨルグ・マイケル。10曲のうち、9曲目まではパワフルに勢いよく飛ばしたヘビーメタルで、最後の曲だけ9分ある。メロディーは特徴的であり、通常のメロディーの流れ方とは違うところがあるが、それを個性としている。スラッシュメタル風ではあるがスラッシュメタルではない。

2
EXECUTION GUARANTEED

1987年。ギターの1人が交代。前作は勢いだけだった。しかし、デビュー盤なので許された。今回はきちんと緩急をつけ、スラッシュメタル風と呼ばれることはない。メロディーの個性の強さは、他の問題点を隠すほどだ。「ダウン・バイ・ザ・ロウ」収録。

3
PERFECT MAN

1988年。ギターとドラムが交代、ギターは1人減り、3人編成になった。サビは覚えやすいが、万人受けするメロディーではない。サビに至る奇妙なメロディーを受け入れられるかどうかで好き嫌いが変わるだろうが、バンドに対する評価は同じだろう。「ドンド・フィアー・ザ・リーパー」収録。「スーパーソニック・ハイドロマティック」「ア・ピルグリムズ・パス」は秀逸。

4
SECRETS IN A WEIRED WORLD

1989年。邦題「ウィアード・ワールド」。日本デビュー盤。前作と同路線だが曲は前作の方がよい。「インビジブル・ホライズンズ」「ライト・イントゥ・ザ・ダークネス」収録。

5
REFRECTIONS OF A SHADOW

1990年。パワフルなヘビーメタルだけでなく、ポップなヘビーメタルも含まれている。キーボードを導入し、間奏でソロを取る曲もある。曲も全体的に明るい。とはいえアルバムの後半は従来通りのサウンドになっている。「ウェイティング・フォー・ザ・ムーン」「サドル・ザ・ウィンド」収録。

 
EXTENDED POWER

1991年。「ウェイティング・フォー・ザ・ムーン」と未発表曲4曲収録のシングル。「ボトルフィールド」はアベンジャー時代の「バトルフィールド」の再録音。「アッシーズ」収録。

6
TRAPPED !

1992年。サウンドが「ウィアード・ワールド」のころに戻った。キーボードを使っていないと主張しているが、キーボードらしき音は出てくる。シンセサイザー・ギターか。「ソリタリー・マン」収録。「イナフ・イズ・イナフ」はスタンダードなヘビーメタルでいい曲。アクセプトの「ファスト・アズ・ア・シャーク」のカバー収録。

 
BEYOND THE WALL

1992年。新曲5曲とアコースティック・バージョン2曲。

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THE MISSING LINK

1993年。曲が粒揃い。バンドの代表曲「レフュージ」収録。トリオ編成では演奏が難しい曲が増えている。「ロスト・イン・ジ・アイス」は途中にストリングスを含む10分近い曲。「ファイアストーム」収録。

 
REFUGE

1994年。シングル盤。ポリスの「トゥルース・ヒッツ・エヴリバディ」、トロッグスの「アイ・キャント・コントロール・マイセルフ」、ミッションの「ビヨンド・ザ・ペイル」のカバー収録。

10 YEARS IN RAGE

1994年。未発表曲集。

8
BLACK IN MIND

1995年。ギターが抜け、新たに2人加入したので4人編成になった。途中に10分の大曲を含み、最後は珍しくバラードで終わる。全体的な流れを重視したアルバム。トータルの時間が長く、内容を持たせるために曲調が暗くなっている。「セント・バイ・ザ・デヴィル」「フォーエバー」収録。

 
LINGUA MORTIS

1996年。チェコ・フィルと共演した企画盤。もともとオーケストラが演奏してもそれほど栄える曲をやっているわけではなかったので、かつての曲が単にゆっくりとした締まりのない演奏になっただけだ。「アライブ・バット・デッド」収録。

9
END OF ALL DAYS

1996年。トリオ時代の曲調に戻り、程々にハード。ただ、曲数が多いために個々の曲の印象は薄くなっていく。「アンダー・コントロール」「ハイヤー・インザ・スカイ」収録。

 
HIGHER IN THE SKY

1996年。シングル盤。アイアン・メイデンの「明日なき戦い」、ジューダス・プリーストの「ジョーブレーカー」のカバー収録。

LIVE FROM THE VAULT

1997年。レイジ初のライブ盤。93年にガンマ・レイ、コンセプション、ヘリコンとともに2枚組のライブ盤を出したことがある。

10
THIRTEEN

1998年。キーボードを大幅に導入し、サウンドの方向を転換した。オープニング曲は曲ではなくイントロだ。「トラップト」以降の純粋ヘビーメタル路線は終わり、ドラマチック路線が始まる。中心人物であるピーヴィー・ワグナーにサウンド・ポリシーの変化があったのは確実で、それは「リングア・モーティス」の経験があったからと推測される。ドラムがツーバスの連打をやろうとしなかったのは正解だ。ローリング・ストーンズの「黒くぬれ」とラッシュの「トム・ソーヤー」のカバーが入っていることも、バンドにとっては画期的。

 
THE BEST FROM THE NOISE YEARS

1998年。初の本格的ベスト盤。シングルを含めたディスコグラフィーの解説に価値がある。

IN VAIN

1998年。アコースティック中心の企画盤。

11
GHOSTS

1999年。前作よりもキーボードの使用率が高くなった。曲の主導権がキーボードにある曲も多い。最も妥当な評価は「ゴシックに近づいた」というところだろう。ヘビーメタルバンドとしてのハードさは失わない。「トゥモロウズ・イエスタデイ」は名曲。

12
WELCOME TO THE OTHER SIDE

2001年。ギター2人とドラムが脱退し、マインド・オデッセイのギター、ビクター・スモールスキーとマイク・テラーナが加入、再びトリオ編成になった。今回はキーボードをほとんど使わないオーソドックスなヘビーメタルで、久しぶりにスピーディーな曲も含まれている。

13
UNITY

2002年。ギターがメロディアスで、キーボードもクラシック風に弾かれるところがあって、そういう曲ではよくあるイングヴェイ・マルムスティーンのような曲に聞こえる。合唱隊を起用した「ディーズ・イレ」は異色だがいい曲。従来型の曲もあり、バラエティーに富んでいる。「インサニティ」収録。

14
SOUNDCHASER

2003年。キーボードはあまり使わず、サウンドはギターとベースとドラムでこなされる。「ウェルカム・トゥ・ジ・アザーサイド」に近い作風。一貫した構想によって曲が連関している。「ウォー・オブ・ワールズ」「シー・ユー・イン・ヘブン・アンド・ヘル」「シークレッツ・イン・ア・ウィアード・ワールド」収録。

FROM THE CRADLE TO THE STAGE

2004年。ライブ盤。アルバムタイトルは「ゆりかごから墓場まで」を引っかけている。「ゆりかごから墓場まで」はイギリスの福祉政策のスローガンで、理念的な用語として世界中に広まった。

15
SPEAK OF THE DEAD

2006年。前半がリングア・モーティスの組曲で、8曲のうち6曲がインスト、後半は通常の曲が7曲。「スイート・リングア・モーティス」は弦楽器をキーボードで代用し、クラシック風に仕立てている。キーボードは多くの部分で単声で、技法としては単純だ。ギターのビクター・スモールスキーが編曲しているが、父がクラシックの演奏家だとか、クラシックに慣れ親しんでいるとか以前のレベルだ。ことさらクラシックとの関わりを持ち出すのは、ヘビーメタルとしての価値の引き上げに、「クラシック」のイメージを悪用しているに過ぎない。通常の曲はこれまでどおりのサウンド。「ソウル・サヴァイヴァー」はいい曲。「フル・ムーン」は日本語バージョンがある。

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CARVED IN STONE

2008年。ドラムが交代。1分ほどのイントロでホルン風のキーボードが使われた後、本格的なヘビーメタルの曲が続く。キーボードはほとんど使われない。曲のアレンジも理解しやすい。最後の曲でキーボードが使われる。すなわち、アルバムの最初と最後でキーボードが登場し、その間に挟まれた曲はオーソドックスなヘビーメタルだ。暗い曲やバラードはなく、どの曲もヘビーメタルのハードさや豪快さを持っているが、安心感以上のスリルが出てこない。ギターのビクター・スモールスキーがキーボード兼任で、クラシックの素養がある点が逆にサウンドの幅の狭さを招いているのではないか。クラシックの素養がある場合、演奏面において大きな変化を好まず、小さな変化をクラシック風のアレンジにとどめる傾向がある。これがいわゆるネオ・クラシカルの画一化の一因だ。編曲の主導権をピーヴィー・ワグナーが取った方がいいのではないか。

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STRINGS TO A WEB

2010年。

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21

2012年。