THE MOODY BLUES

  • イギリスのプログレッシブ・ロックバンド。5人編成。当初は一般的なロックンロール・バンドだった。
  • 1967年の「サテンの夜」で他のバンドよりも早くプログレッシブ・ロックに移行。72年の「神秘の世界」までジャンルを牽引した。
  • アルバムごとにテーマを設定すること、幻想文学に傾倒すること、メロトロンで雰囲気を作ることなど、ヨーロッパのロックに大きな影響を与えた。
  • 重要人物はボーカルのレイ・トーマス、ギターのジャスティン・ヘイワード、キーボードのマイク・ピンダー、ドラムのグレアム・エッジ。80年代はキーボードのパトリック・モラーツが主導する。
  • 代表作は「サテンの夜」「夢幻」「童夢」「魂の叫び」など。

1
THE MAGNIFICENT MOODIES

1966年。邦題「ムーディー・ブルース・ファースト・アルバム」。12曲のうちメンバーが作曲しているのは4曲で、8曲はリズム&ブルース等のカバー。ボーカル兼ギターはデニー・レイン。サウンドもリズム&ブルースやソウル。デニー・レインはこのあとポール・マッカートニー&ウィングスに加入。「ゴー・ナウ」収録。

2
DAYS OF FUTURE PASSED

1967年。邦題「サテンの夜」、のちに「デイズ・オブ・フューチャー・パスト」。ボーカル兼ギターのデニー・レインとベースが抜け、ジャスティン・ヘイワードとジョン・ロッジが加入。ロンドン・フェスティバル・オーケストラと共演し、コーラスやキーボードも必要十分に使用する。アルバムにコンセプト性を持たせており、これがプログレッシブ・ロックのひな形となった。ジャンルが広く認知されるには、相当のヒットになることが重要で、プログレッシブ・ロックの最初の作品はまぎれもなくこのアルバムだ。「サテンの夜」収録。全英27位、全米3位。

3
IN SEARCH OF THE LOST CHORD

1968年。邦題「青空に祈りを」、のちに「失われたコードを求めて」に改題。タイトルはマルセル・プルーストの「失われた時を求めて」を借用。メロトロンが単独でソロをとる。楽器数が多いとされるが、ロイ・ウッド&ウィザードのように詰め込んだ音ではなく、各種楽器が次々と単独使用される感じ。「ライド・マイ・シーソー」「ドクター・リビングストン」収録。全英5位、全米23位。

4
ON THE THRESHOLD OF A DREAM

1969年。邦題「夢幻」。邦題はサウンドにふさわしい。ポップで牧歌的な曲とメロトロンが多用されたクラシック的な曲がそれぞれ同一の幻想に向かっている。全英1位、全米20位。

5
TO OUR CHILDREN'S CHILDREN'S CHILDREN

1969年。邦題「子どもたちの子どもたちの子どもたちへ」。ハードな曲とミドルテンポの曲、シンプルな曲と大仰なサウンドの曲が交代で並ぶような構成。テーマは宇宙旅行。オープニング曲はロケットの発射音。全英2位、全米14位。

6
QUESTION OF BALANCE

1970年。コンセプト性はない。演奏面をシンプルにしたとか、ムーグを使用したとか言われるが、さほど前作と変わっているようには聞こえない。「クエッション」収録。全英1位、全米3位。

7
EVERY GOOD BOY DESERVED FAVOUR

1971年。邦題「童夢」。ロックらしい曲と、プログレッシブ・ロックらしい展開のある曲があり、どちらもいい出来だ。「ストーリー・イン・ユア・アイズ(愛のストーリー)」収録。ボーカルをとれるメンバーが4人いるのでコーラスは美しいが、個々のリード・ボーカルは淡さが目立ち、ロックの活力が不足する。それが個性だとも言える。全英1位。全米2位。

8
SEVENTH SOJOURN

1972年。邦題「神秘な世界」。曲が通常のロックと同じ型になり、万人に受け入れられやすくなった。「ロックン・ロール・シンガー」「ユー・アンド・ミー」などは聞きやすい。全英5位、全米1位。

THIS IS THE MOODY BLUES

1974年。邦題「失われたロマンを求めて・ムーディー・ブルースの世界」。バージョン違いを含むベスト盤。全英14位、全米11位。

 
CAUGHT LIVE+5

1977年。邦題「ライブ・トラックス+5」。1969年のライブ。「デイズ・オブ・フューチャー・パスト」から「夢幻」までの曲。「ゴー・ナウ」は演奏していない。最後の5曲はスタジオ録音。

9
OCTAVE

1978年。邦題「オクターブ・新世界の曙」。各メンバーがソロアルバムを発表したあと、久しぶりに出たアルバム。メロトロンはほとんど使われず、キーボード中心のロックになっている。サックスやホーン・セクションも入り、もはやプログレッシブ・ロックとは呼べない。この時期にイギリスのバンドがハードロックやパンクではない一般的なロックのアルバムを出したことがポイントか。全英6位、全米13位。

10
LONG DISTANCE VOYAGER

1981年。邦題「ボイジャー~天海冥」、のちに「魂の叫び」。キーボードのマイケル・ピンダーが抜け、イエスのパトリック・モラーツが加入。さらにポップになり、キーボードもピアノやオルガンというよりはシンセサイザーで濁りの少ない音だ。ボーカルも弾んでおり、「デイズ・オブ・フューチャー・パスト」以来再び別のバンドと化したかのようだ。全英7位、全米1位。

11
THE PRESENT

1983年。邦題「プレゼント・新世界への道程」。「タイム」や「シークレット・メッセージ」のころのエレクトリック・ライト・オーケストラに近いサウンド。曲はいい。ポップになっても質は落ちないことが分かる。しかし、MTV時代を迎えた80年代前半のサウンドとは違いすぎ、過去最低のヒットとなった。全英15位、全米26位。

12
THE OTHER SIDE OF LIFE

1986年。さらにポップになり、ロックとも呼べなくなりつつある。キーボード主体で音が澄んでいる分軽めに聞こえる。ギターが活躍する部分は少ない。80年代のビーチ・ボーイズとも言える。全英24位、全米9位。

13
SUR LA MER

1988年。前作と同路線。全英21位、全米38位。

14
KEYS OF THE KINGDOM

1991年。キーボードのパトリック・モラーツが抜け4人編成。メロトロンとコーラスを主体にしたサウンドよりも、ポップなロックをやっている期間の方が長くなった。前作と同路線。「イズ・ジス・ヘブン」はニュー・シーカーズの「愛するハーモニー」を思い出す。「ケルティック・ソウナント」はいい曲。全英54位、全米94位。

 
A NIGHT AT RED ROCKS WITH THE COLORADO SYMPHONY ORCHESTRA

1993年。ライブ盤。コロラド交響楽団と共演。キーボード2人のうち1人はブリス・バンドのポール・ブリス。15曲のうち、「デイズ・オブ・フューチャー・パスト」から「神秘な世界」までの曲が10曲。「ムーディー・ブルース・ファースト・アルバム」「夢幻」「子どもたちの子どもたちの子どもたちへ」「オクターブ・新世界への曙」「プレゼント・新世界への道程」からは選曲されず。

15
STRANGE TIMES

2000年。「ジ・アザー・サイド・オブ・ライフ」以降と同じ路線。オープニング曲はドラムン・ベースを導入しているというが、だからといって評価が変わるわけではない。全英19位、全米93位。