KASABIAN

  • アークティック・モンキーズやザ・ミュージックとともに、2000年代にデビューした代表的なイギリスのアーティストのひとつ。
  • ボーカル、ギター兼キーボード、ベース、ドラムの4人編成。作詞作曲の中心はギター兼キーボードのセルジオ・ピッツォーノ。

1
KASABIAN

2004年。キーボード、電子音の比重が大きいロック。ゆっくり流れる背景音としてのキーボードと、メロディーを構成するキーボードを使い分け、プライマル・スクリームのような音響的酩酊感がある。ドラムは人間的響きを持っており、電子音の代用はほとんどない。キーボードで不気味さや不穏な雰囲気が醸し出され、それが独自のサウンドになっている。「クラブ・フット」はアルバムの中では異色。

EMPIRE EP

2006年。シングル盤。「ブラック・ウィスラー」「ケタング」収録。

2
EMPIRE

2006年。キーボードが減り、ギターが増えた。ギターは加工されていることが多い。ドラム、ベースが筋肉質だ。「ミー・プラス・ワン」「サン・ライズ・ライト・フライズ」「バイ・マイ・サイド」はメロトロンもしくはストリングスが使われる。アルバムの後半は電子音、キーボードが増えてくる。最後の2曲は後期のビートルズのような曲。全曲を作曲しているセルジオ・ピッツォーノは映画音楽のエンニオ・モリコーネのファンだという。

SHOOT THE RUNNER EP

2006年。ゲイリー・グリッターの「ロックンロール・パート2」やスージー・クアトロの「悪魔とドライブ」を90年代以降のサウンドで再構築したような曲。

3
WEST RYDER PAUPER LUNATIC ASYLUM

2009年。邦題「ルナティック・アサイラム」。1960年代後半のガレージロック、ブルースロックから、アコースティックギターによるウェスタン、90年代のエレクトロ・ロックとサウンドが多岐にわたる。ヨーロッパのロックに主軸を置いているように見受けられる。キーボードは以前ほど派手ではない。何が出てくるかわからない楽しみはやや減る。日本盤ボーナストラックでデル・シャノンの「悲しき街角」をカバーしている。

4
VELOCIRAPTOR!

2011年。音の数を抑えたサウンドは前作から継承し、全曲をロックの範囲内に収まるようにしている。タイトル曲はデヴィッド・ボウイの雰囲気。アルバムの前半は60年代ロックを思わせる。ビートルズやオアシスもこのライン上にある。タイトル曲や「アイ・ヒア・ヴォイシズ」「スウィッチブレイド・スマイルズ」は現代風のサウンド。「エンパイア」のようにアナログ盤のA面、B面を意識しているかもしれない。

5
48:13

2014年。13曲のうち3曲は短い間奏になっており、実質的に10曲が2曲、4曲、4曲にグループ化されている。曲調に注目すれば最初の2曲はロック寄り、真ん中の4曲はエレクトロニクスを使ったロック調ダンス音楽が中心、後半の4曲はやや情緒性のある曲を集めたように見える。デビュー盤から「エンパイア」のころを意識したようなロック。アルバムの真ん中にある曲はDJプレイでも使えるようなエレクトロのサウンド。

6
FOR CRYING OUT LOUD

2017年。ほぼバンドサウンドだけでロックンロールを作っている。多くの曲は親しみやすいメロディーだ。オープニング曲の「イル・レイ(ザ・キング)」はアルバム全体のイメージを宣言する。ディスコ調の曲はあるものの、全体としてロックンロールのバンドサウンドに統一したことはロックへの回帰を分かりやすく示し、好印象を与える。エレクトロニクスを感じさせる部分は少ない。12曲のうち前半の6曲はロックンロールで、7曲目から10曲目まではミドルテンポやディスコ調の長い曲を並べている。これまでと同様に、アナログ盤のA面とB面を意識した曲順とみられる。「アー・ユー・ルッキング・フォー・アクション?」はディスコ調。日本盤ボーナストラックの5曲はアルバム収録曲をアコースティックギターだけで歌う。