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THE FLAMING LIPS

1
HEAR IT IS
1986年。メロディーもアンサンブルもガレージロック。たくさんあるロックバンドの中の1つであって、特に見出すところがあるサウンドではない。トリオ編成なので音の数は少ないが、「ゴジラ・フリック」はコーラスをつけているので余裕があれば音を加工する気はあるようだ。「サマータイム・ブルース」はエディ・コクラン、ザ・フーのカバー。
2
OH MY GAWD!!!...THE FLAMING LIPS
1987年。2曲目にタイトルの長い9分20秒の曲があり、音楽によって何かを表現したい意図が現れている。同じテンポで徐々に盛り上がっていき、ハードに演奏して再び静かになっていくという単純な構成ではあるが、ロックを衝動の解放として表現しているわけではないことをほのめかす。このほかテープの逆回転やキーボード主導の曲なども、ギター、ベース、ドラムの3人編成としては実験性に富む。
3
TELEPATHIC SURGERY
1989年。CDには2曲のボーナストラックがあり、そのうちの1曲は23分ある。これが前作の実験の延長線上にあり、ロックの演奏の上に様々な音を編集してつなげている。「UFOストーリー」も後半がピアノソロになる。「クローム・プテイテッド・スーサイド」「ハリ・クリシュナ・ストンプ・ワゴン(ファック・レッド・ツェッペリン)」「レッドネック・スクール・オブ・テクノロジー」はガレージロック寄りのロックンロール。
4
IN A PRIEST DRIVEN AMBULANCE
1990年。ドラムが交代し、ギターが加入、4人編成となった。ダイナソーJR.と同様に、ボーカルの技巧を意図的に無視した歌い方だ。この当時のアメリカで優勢だったハードロックの歌い方に対する嫌悪感もあるだろう。これが92年を境に好意的評価につながっていく。バンドアンサンブルとしては一般的なガレージロックとなり、A面の最後とB面の最初がアコースティックギターによるやや凝った曲となっている。裏ジャケットには10曲全てが3分26秒と表記されているが実際は曲によって3分から6分台。最後の曲はルイ・アームストロングの「この素晴らしき世界」のカバー。
5
HIT TO DEATH IN THE FUTURE HEAD
1992年。大手レコード会社と契約し、世界規模で発売されるようになった。曲がポップになり、80年代風の明瞭さを否定するようなギターとボーカルが90年代の流行と一致している。オープニング曲の「愛と官能のブルース」は低音のコーラスがドゥーワップの雰囲気を出し、明るい曲になっている。これまでで最もコーラスが多い。このアルバムで日本デビュー。
6
TRANSMISSIONS FROM THE SATELLITE HEART
1993年。ギターが不協和音や音程の揺らぎ、音の割れを含むが、曲は前作に続きポップだ。ただ、怒りや陰鬱といった時代の空気とは異なる方向のサウンドであるため、注目を受けるようなことはなかった。日本盤は1995年発売。
7
CLOUDS TASTE METALLIC
1995年。メロディーは以前からの分かりやすさがあるが、明るいメロディーよりはやや暗めで、流行の影響を受けたようなサウンド。若干の実験性あるいはサイケデリックサウンドを含んだオルタナティブ・ロックなので当時の評価は高かった。前作は出なかった日本盤がこのアルバムでは出た。ギターが中心となるアルバムはこれが最後。
8
ZAIREEKA
1997年。ギターが抜け3人編成。4枚組で、4枚を同時に再生してひとつのアルバムとなる。それぞれのCDには異なる音が入っており、曲の途中では無音部分もあるが、4枚全体では一体の曲となる。2分台から10分超まで8曲入り。アルバムタイトルはザイールとエウレカ(ユリイカ)を合わせた造語。ザイールとは無政府状態、エウレカはひらめきを表すという。日本盤は出なかった。
9
THE SOFT BULLETIN
1999年。キーボードを大幅に取り入れ、「クラウズ・テイスト・メタリック」のメロディーをドラマチックにしたサウンドとなった。キーボードをメロディー楽器の中心とし、シンセサイザー、コーラス、エレクトロニクスで明瞭なメロディーを作るが、明るくポップという曲調ではなく、ややドラマ性のある曲が多い。ボーカルも聞きやすくなった。以前とは別のバンドというくらいに音が変わった。ポストロックやインダストリアルロックのような機械的な音にせず、ストリングスのような柔らかい音を多用したことも聞きやすさに貢献しているだろう。もともと不可解なだった歌詞が、シンセサイザー中心のサウンドによって哲学的に見えるようになってくる。「レース・フォー・ザ・プライズ」収録。代表作。
RACE FOR THE PRIZE
1999年。EP盤。「ライディング・トゥ・ワーク・イン・ザ・イヤー2025」「サーティーファイヴ・サウザンド・フィート・オブ・ディスペアー」は「ザイルーカ」収録曲。「ビッグ・オール・バグ・イズ・ザ・ベイビー・ナウ」は「ザイルーカ」収録曲のラジオバージョン。「ザイルーカ」収録の3曲は4枚のCDを合成した音が入っている。
10
YOSHIMI BATTLES THE PINK ROBOTS
2002年。ピンクのロボットが日本人女性のヨシミに恋をするというテーマのアルバム。ロボットが出てくるためか、前作よりシンセサイザーの度合いが大きくなり、ギターはあまり出てこなくなった。音の重なりが少ない中でシンセサイザーやエレクトロニクスだけが響くところも多く、それがサイケデリックな雰囲気を増幅している。「ドゥ・ユー・リアライズ?」「ファイト・テスト」収録。日本盤はアルバムタイトル曲の日本語バージョンが入っている。前作の高評価を受けて英米でヒットした。
FINALLY THE PUNK ARE TAKING ACID
2002年。邦題「コンプリート1983-1988」。3枚組。デビューから3枚のアルバムのほぼ全曲と、EP盤、ボーナストラックを加えた企画盤。収録されていないのは「ヒアー・イット・イズ」の「サマータイム・ブルース」のみ。初期のアルバムが日本盤として出るのはこの企画盤が初めて。日本盤は2003年発売。
THE DAY THEY SHOT A HOLE IN THE JESUS EGG
2002年。邦題「コンプリート1989-1991」。2枚組。1枚目は「イン・ア・プリースト・ドリヴン・アンビュランス」全曲とボーナストラック5曲、2枚目はアルバムの初期バージョンや別バージョンを18曲収録。「コンプリート1983-1988」の続編として出ているので、1枚目がDISC No.4、2枚目がDISC No.5となっている。日本盤は2003年発売。
11
AT WAR WITH THE MYSTICS
2006年。邦題「アット・ウォー・ウィズ・ザ・ミスティックス(神秘主義者との交戦)」。エレキギターが増加し、ドラムによるリズムも復活した。70年代風のアナログキーボードとサウンドがあり、「ザ・ソフト・ブレティン」「ヨシミ・バトルズ・ザ・ピンク・ロボッツ」に比べてエレクトロニクスは少ない。「しくじりの音/暗い闇…いつだってこんなに暗いのか?」はオーリアンズが内省的になったような曲。「圧倒されて/星々はあんなに巨大なのに、自分はあまりにちっぽけだ…こんな私にちゃんすはあるのか?」はイエス風プログレッシブロック。「ポンペイの黄昏」はメロトロンのような音も使うピンク・フロイド風のサウンド。
12
EMBRYONIC
2009年。ドラムが加入し4人編成。2分台の曲が増え、18曲で71分。「ザ・ソフト・ブレティン」「ヨシミ・バトルズ・ザ・ピンク・ロボッツ」の親しみやすいサウンドとは異なり、「アット・ウォー・ウィズ・ザ・ミスティックス(神秘主義者との交戦)」の70年代風ロックサウンドとも異なり、60年代後半の緊張感と実験性を伴ったロックとなっている。マハヴィシュヌ・オーケストラやマイルス・デイヴィス、ホワイトアルバムのビートルズ、4枚目以降のレッド・ツェッペリンのような、何かの解決を追求しない純粋芸術的なサウンドとなっている。
13
THE FLAMING LIPS AND HEADY FWENDS
2012年。邦題「ザ・フレーミング・リップスと愉快な仲間たち」。ジャケットとタイトルは「スクリーミング・ロード・サッチ・アンド・ヘビー・フレンズ」のパロディー。曲ごとにゲストを招いており、ケシャ、プレフューズ73、テーム・インパラ、ニック・ケイヴ、オノ・ヨーコ、エリカ・バドゥらが招かれている。ギターがポストロックのような強いディストーションがかかり、サウンド全体も音が割れ気味だ。もちろんサウンドとして狙って作ったとみられる。
14
THE TERROR
2013年。ギター兼キーボードが加入し5人編成。5人のうち4人はキーボードを担当し、3人はギターを担当する。楽器編成はあまり意味を持たなくなっており、「エンブリオニック」に近い緊張感と陰鬱さのあるエレクトロ音楽、。「アット・ウォー・ウィズ・ザ・ミスティックス(神秘主義者との交戦)」から「ザ・フレーミング・リップスと愉快な仲間たち」は過去のロックを参照したサウンドだったが、このアルバムはエレクトロニクス、ハードディスク編集・加工を伴った現代的なサウンドで、オルタナティブ・ロック、サイケデリック・ロックの10年代版を提示している。日本盤ボーナストラックの「サン・ブロウズ・アップ・トゥデイ」だけはポップだ。
15
OCZY MLODY
2017年。ドラムが抜け、キーボード、ドラム、パーカッションが加入、7人編成。キーボード、シンセサイザーを中心とする浮遊感のあるサウンド。前作と同様に、ギターやベース、ドラムといったバンド編成は意味を持たなくなるほどエレクトロニクスを多用している。これまでフレーミング・リップスは、60年代後半のサイケデリックロックに影響を受けていることを度々公言しているため、聞き手もそれを前提に曲調を認知する。しかし、結果として若手のバンドによるエレクトロニクスを駆使したサウンドとそれほど違いはなく、ベテランアーティストが若手アーティストに追従しているかのように見えてしまうことは否定できない。歌詞はほほえましいくらいに古典的な幻想風景を描いており、ユニコーン、フェアリーズ、ウィザード等を登場させている。

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