EPICA

エピカはオランダのヘビーメタルバンド。6人編成。クラシック調のドラマティックなヘビーメタルを主とする。女性ボーカルはメゾソプラノのシモーネ・シモンズ。アフター・フォーエヴァーのギターだったマーク・ヤンセンが結成した。アルバムによって弦楽器、管楽器奏者を使ったりキーボードを使ったりしている。サウンドがクラシック調のため、人気は大陸ヨーロッパ中心にとどまる。

1
THE PHANTOM AGONY

2003年。女声ボーカル、ギター2人、キーボード奏者を含む6人編成。ギターの1人、マーク・ヤンセンが中心人物で、デス声のボーカルも担当する。マーク・ヤンセンはアフター・フォーエヴァーの元メンバー。作曲は主にギターの2人とキーボード奏者がするので、メロディー楽器中心のバンドと言えるだろう。女声ボーカルのシモーネ・シモンズはメゾソプラノでクラシック風に歌うが、表現力は発展途上だ。バックの演奏には8人の弦楽奏者、6人の合唱隊が参加しており、クラシック風のサウンドをさらに本格的にしている。オランダ出身。9曲で52分。1曲目はイントロなので実質8曲。

2
COINSIGN TO OBLIVION

2005年。女声ボーカルの歌唱力が上がり、デス声ボーカルが大幅に減った。イントロがあって2曲目に続き、最後の曲が長めという構成は前作と同じ。弦楽器奏者と合唱隊も前作同様に取り入れる。弦楽器はコントラバスがいなくなり、バイオリン、ビオラ、チェロになった。多くの曲が4分台で、最後の曲は10分弱。「トラ・フィエース」の男声ボーカルはコンセプション、キャメロットのロイ・カーン。

3
THE DIVINE CONSPIRACY

2007年。ドラムが脱け5人編成に。弦楽器奏者は使っていない。サウンドがハードになり、ドラムは全体的に高速になっている。ヘビーメタルに大きく傾いたという印象で、クラシック風サウンドのロックとして聞いていた人には過剰に激しくなったと感じるだろう。アルバム全体が4曲ずつ3部構成になっており、曲の長さは決まっていない。最後の曲は14分ある。

THE CLASSICAL CONSPIRACY

2009年。オーケストラとの共演によるライブ盤。

4
DESIGN YOUR UNIVERSE

2009年。9人の声楽家が参加し、前作並に豪勢なサウンド。4曲目まではハードでスピーディーだ。「キングダム・オブ・ヘヴン」は5部構成で13分半ある。後半はオーケストラ風キーボードと声楽が前面で、バンドサウンドが偶然ヘビーメタルだったというようなサウンド。女性ボーカルのシモーネ・シモンズはバックの演奏と対等にわたりあえるほど歌唱力が付いている。声に厚みが出てきた。13曲で75分。

5
REQUIEM FOR THE INDIFFERENT

2012年。アルバムを前半と後半に分け、前半はアルバムタイトル曲を中心とする「終焉に向かう世界」、後半は「セレナーデ・オヴ・セルフ・デストラクション」を中心とする「再生に向かって飛び立つ過程」を描いている。キリスト教の「出エジプト記」のように、苦難の世界から新しい世界に出て行く物語になっており、ヨーロッパ人にはよくある発想だろう。

RETROSPECT

2013年。ライブ盤。

6
THE QUANTUM ENIGMA

2014年。ベースが交代。前作に続き、アルバムを前半と後半に分ける。女声9人、男声6人、弦楽器奏者16人が参加。女声9人がボーカルと同等の役割を果たし、男声6人も補完する。ボーカルのシモーネ・シモンズが単独で歌う部分は相対的に減り、バロック時代のカンタータと同様、詩篇を合唱でつないでいくような曲が多い。バンド演奏はハードになっている。

7
THE HOLOGRAPHIC PRINCIPLE

2016年。弦楽器奏者のほか、管楽器奏者も参加。ギターは2人から1人になり、ギター兼ボーカルがデス声ボーカル専任となっている。ギターとキーボードが演奏する楽器の種類が増え、バラライカやマンドリン、グロッケンシュピールも演奏する。管楽器奏者も参加していることを考えれば、キーボードで代用していた楽器をできる限り実際の楽器で演奏しようとしている。セリオンのサウンドに近づいていると言える。「レクイエム・フォー・ジ・インディファレント」「クォンタム・エニグマ」は、バンドが宗教的先導者のような立場で作詞されていたが、このアルバムでは近未来の社会や人間の感性の変容を評論家のように語る曲が多い。アコースティック曲を5曲収録したボーナスCD付きも出ている。

THE SOLECE SYSTEM

2017年。EP盤。「ザ・ホログラフィック・プリンシプル」に収録されなかった曲を6曲収録。「ザ・ホログラフィック・プリンシプル」と同じ参加者で録音している。

EQUILIBRIO/XYSTUS

2008年。オランダのヘビーメタルバンドがオーケストラを取り入れて制作したロックオペラ。エピカのボーカル、シモーネ・シモンズが参加している。オーケストラは金管楽器、打楽器を含むロマン派並みの規模。コーラスはセリオンほどではない。ボーカルにはミュージカル歌手が参加している。シンセサイザーの代用ではなくオーケストラを使っているので、音に奥行きと広がりがある。オペラでいえば2幕で構成されるが、場は少なくとも15ある。演奏がある場のみ曲として収録されているので、オペラとしてはジングシュピール形式とみられる。日本盤は幕と場の数え方がおかしい。