CURVED AIR/WOLF

  • イギリスのプログレッシブ・ロックバンド。バイオリン奏者、女性ボーカルを含む5人編成。
  • フォーク、クラシックを取り入れた独自のサウンド。実質的に70年代前半だけの活動だった。
  • バイオリン奏者のダリル・ウェイは解散後ラリル・ウェイズ・ウルフを結成。

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AIR CONDITIONING

1970年。女性ボーカルのソーニャ・クリスティーナ、バイオリンのダリル・ウェイ、ギター兼キーボードのフランシス・モンクマンの3人を中心とし、その他2人からなる5人編成。ダリル・ウェイはバロック時代に緩-急-緩のコンチェルト形式を確立したヴィヴァルディに大きく傾倒しており、ヴィヴァルディのタイトルをつけた曲が2曲もある。女性ボーカルとバイオリンを擁するロックは斬新で、デビュー時から注目された。バイオリンは縦横無尽、ソーニャ・クリスティーナは線が細い。「今日突然に」「ストレッチ」「プロポジション」「シチュエイションズ」収録。

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SECOND ALBUM

1971年。「ある幻想的な風景」という副題がついている。前作のような自己満足的な曲はなくなり、どの曲もロック、ポップスとしての体裁を整えている。相対的にフランシス・モンクマンのキーボードの比重が高くなった。A面5曲はフランシス・モンクマン作曲、B面3曲はダリル・ウェイ作曲。最後の曲は13分近くある。「バック・ストリート・ラヴ」「ユー・ノー」収録。

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PHANTASMAGORIA

1972年。プログレッシブ・ロックが好きな人にはこのアルバムが最高作になるようだ。A面はダリル・ウェイ、B面はフランシス・モンクマンを中心に作曲されている。「マリー・アントワネット」「メリンダ」はライブの定番。ダリル・ウェイはクラシック・スタイル、フランシス・モンクマンはジャズ・スタイル。

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AIR CUT

1973年。ダリル・ウェイとフランシス・モンクマンとドラムが脱退し、キーボード兼バイオリンのエディー・ジョブソンほか2人が加入。最もハード・ロック寄りの音。バイオリンの登場頻度は少ない。ギターのロバート・カーリーが作曲した3曲はハードロック。ソーニャ・クリスティーナ以外のメンバーがリード・ボーカルをとる曲が初めて出てきた。

LIVE

1975年。解散後、ダリル・ウェイとフランシス・モンクマン、ドラムが復帰して録音されたライブ盤。

5
MIDNIGHT WIRE

1975年。再びフランシス・モンクマンが脱退し、ギターとドラムが加入。ドラムは後にポリスのスチュアート・コープランド。ベースとキーボードはゲスト・アーティスト。ダリル・ウェイがバイオリンを弾きまくる曲はなく、10分を超えるような長尺の曲もない。冒頭の曲はブルージーであるとさえ言える。多くの人になじみやすい体裁になったがポップになったわけではない。

6
AIRBORNE

1976年。邦題「空中漂流」。明らかにコンテンポラリーになり、曲によってはAOR。ダリル・ウェイが書いたとは思えないような曲もある。コーラスも導入し、ギターもエキセントリックな音ではなくなっている。アメリカン・プログレ・ハードなら名作だ。従前のイメージが強すぎて当時は十分な評価が得られなかった。「月の光」収録。

 
LOVECHILD

1990年。73年ごろのメンバーで録音した未発表曲集。作曲者によって曲の雰囲気が明確に違う。「エア・カット」の通り、エディー・ジョブソンの曲はキーボードを中心とするプログレッシブ・ロック。ロバート・カービーはロック。ソーニャ・クリスティーナはポップス。

LIVE AT THE BBC

1995年。

 
ALIVE 1990

2000年。90年の再結成ライブ。デビュー時のメンバーのうちベース以外の4人が参加。「エア・コンディショニング」から「ファンタスマゴリア」までの曲を演奏している。「エア・カット」以降のアルバムからは選曲されていない。ソーニャ・クリスティーナのボーカルは比較的良好。エレキドラムなので音がソリッドに聞こえる。

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NORTH STAR

2014年。キーボードを含む6人編成。ボーカルはソーニャ・クリスティーナ。ドラムはデビュー時のメンバー。ギターは「エア・カット」発表時のメンバー。14曲のうち7曲が新曲で、70年代の再録音が3曲、ビートルズ、ポリス、スノー・パトロール、ソーニャ・クリスティーナのカバーがある。新曲はバンドの方向性を示しており、ドラム、ギターはロック、キーボードはジャズ、フュージョン風であることが多い。ソーニャ・クリスティーナのボーカルはデビュー時から不変とも言えるような、ささやき気味の歌い方だ。バイオリンはエレキバイオリン特有の単調な音色。「スパイダー」はアップテンポなフュージョン風インスト曲。ビートルズの「アクロス・ジ・ユニヴァース」はキーボードだけの演奏にソーニャ・クリスティーナがボーカルを乗せる。

CANIS-LUPUS/DARRYL WAY’S WOLF

1973年。邦題「ダリル・ウェイ&ウルフ」。カーヴド・エア脱退後のダリル・ウェイが結成したバンド。ベース兼ボーカル、ギター、ドラム、バイオリン兼キーボードの4人編成。カーヴド・エア時代もそうだったが、A面とB面で曲の雰囲気を大きく変えている。A面はボーカル入り、B面はインスト。多くのファンはB面を評価する。確かにダリル・ウェイが音楽的主導権を取っている曲はB面の3曲。「悲しみのマクドナルド」収録。

SATURATION POINT/DARRYL WAY’S WOLF

1973年。邦題「飽和点」。インスト中心。

 
NIGHT MUSIC/DARRYL WAY’S WOLF

1974年。邦題「群狼の夜の歌」。専任ボーカルを入れて5人編成になった。ダリル・ウェイにとっては、これまでで最もまともに声が出るボーカルになる。バイオリンはあくまでもバックの演奏として目立ちすぎない位置にいる。「黒い9月」は恐らく1970年のヨルダン内戦を歌っている。72年のミュンヘン五輪でイスラエル代表選手を射殺したのがパレスチナ解放機構(PLO)の暗殺部隊「黒い9月」だ。

CONCERTO FOR ELECTRIC VIOLIN/DARRYL WAY

1978年。バイオリン以外の音はほとんどがシンセサイザーで演奏されるクラシック作品。

SONJA KRISTINA/SONJA KRISTINA

1980年。ソーニャ・クリスティーナのソロ。未CD化。

SONGS FROM THE ACID FOLK/SONJA KRISTINA

1991年。カーヴド・エア時代の「メリンダ」を再録。

 
HARMONICS OF LOVE/SONJA KRISTINA

1995年。カーヴド・エア時代の「ブラインド・マン」を再録。バックはバイオリン、ベース、ドラム、パーカッション、キーボードで編成されるバンドが演奏している。エレノア・マッケヴォイの「ウーマンズ・ハート」をカバー。こういう音をアシッド・フォークと呼ぶのなら、そう納得することになるが、アルバム全体を支配する雰囲気は夢心地的気だるさ。ポップスと言ってもよい。

CRI DE COEUR/SONJA KRISTINA

2003年。