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BOB DYLAN

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BOB DYLAN
1962年。ボーカルとアコースティック・ギターとハーモニカだけで演奏している。13曲のうち、自作曲は2曲で、残りは民謡やブルースのカバー。知名度で言えば「朝日のあたる家」が有名だが、これももとは民謡で、アニマルズがカバーして有名になった。自作曲の2曲は「ニューヨークを語る」と「ウディに捧げる歌」。「ニューヨークを語る」は歌詞にメロディーをつけないトーキング・ブルースの形で歌われる。このアルバムに関するボブ・ディランの重要性は、歌やハーモニーの美しさに重きが置かれていたフォーク音楽に稚拙とも言えるボーカルで登場し、新しいスタイルを持ち込んだことだ。それが反体制、あるいはカウンター・カルチャーというイメージとともに語られることもあるが、そうした意味が重大になってくるのは次作以降だ。
2
THE FREEWHEELIN’ BOB DYLAN
1963年。社会性を持った歌詞で、若者の支持を得た。当時の音楽では、社会問題について歌う人は少なかった。ロックン・ロール、ブルース、ラブソング、民謡、生活、学校についての歌はあったが、ブルースやロックン・ロールをやっているからといって、それが直ちに反体制的だという評価はされなかった。そもそも、当時はロックン・ロールにそうしたイメージはなく、このアルバムは「革新的」という評価が先に立っていた。今では当たり前になったロックの反体制性が、ロックの中からではなくフォークから持ち込まれたところにボブ・ディランの偉大さがある。「風に吹かれて」は代表曲。「コリーナ、コリーナ」はベース、ドラムが入る。「北国の少女」「戦争の親玉」「はげしい雨が降る」「くよくよするなよ」「第3次世界大戦を語るブルース」収録。全米22位。
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THE TIMES THEY ARE A-CHANGIN’
1963年。邦題「時代は変る」。前作に続きプロテスト・フォークの路線。「神が味方」と「ハッティ・キャロルの寂しい死」と「しがない歩兵」は告発対象が共通している。全米20位。
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ANOTHER SIDE OF BOB DYLAN
1964年。プロテスト・フォークではない別の側面を強調したかのようなアルバム。サウンドはデビュー以来変わっていないが、明確なプロテスト・ソングはない。「オール・アイ・リアリー・ウォント」はシェールとバーズ、「マイ・バック・ペイジズ」はバーズがカバー。「悲しきベイブ」収録。全米43位。
5
BRINGING IT ALL BACK HOME
1965年。ドラム、エレキ・ギター、ベース、キーボードを導入し、フォークからロックに転換した。A面の7曲はすべてバンドサウンドで、どの曲もフェードアウトで終わる。「ボブ・ディランの115番目の夢」は6分半ある。B面の4曲は従来通りアコースティック・ギターとハーモニカを使う。「ミスター・タンブリン・マン」はバーズがカバーして全米1位。「ラブ・マイナス・ゼロ/ノー・リミット」収録。全米6位。「サブタレニアン・ホームシック・ブルース」は39位。
6
HIGHWAY 61 REVISITED
1965年。邦題「追憶のハイウェイ61」。9曲のうち8曲でバンド形態をとっており、最後の「廃墟の街」はアコースティック・ギター2本だけで演奏される。オープニング曲の「ライク・ア・ローリング・ストーン」がアメリカ全体で初めて大ヒット。「トゥームストーン・ブルース」はハードだ。「やせっぽちのバラッド」をはじめ、ピアノやオルガンが曲の雰囲気を決めることが多い。マイク・ブルームフィールドがギターで、アル・クーパーがオルガンとピアノで参加。全米3位。「ライク・ア・ローリング・ストーン」は2位。
7
BLONDE ON BLONDE
1966年。2枚組。バンド形態なので「ロック・サウンド」と呼べないことはないが、実際は40、50年代風の雰囲気を醸し出しており、これが新しいサウンドということになるならば「フォーク・ロック」の傑作だ。ここに言われるフォークとは、民謡という意味に近い古風なアレンジを含むと解釈すればなお分かりやすい。アル・クーパー、ジョー・サウス、ロビー・ロバートソンが参加。全米9位。「雨の日の女」は2位、「アイ・ウォント・ユー」は20位、「女の如く」は33位、「ヒョウ皮のふちなし帽」は81位。
 
BOB DYLAN'S GREATEST HITS
1967年。ベスト盤。フォーク時代の曲は「風に吹かれて」と「時代は変る」の2曲。シングルのみで発売された「寂しき4番街」は「ブロンド・オン・ブロンド」収録曲に近いサウンド。全米10位。500万枚。
8
JOHN WESLEY HARDING
1968年。ボブ・ディランがボーカル、ギター、ハーモニカ、ピアノを担当し、事実上トリオ編成で録音している。したがってサウンドはシンプル。エレキギターやオルガンは使われない。「見張り塔からずっと」はジミ・ヘンドリクスがカバーして有名。「フランキー・リーとジュダス・プリーストのバラード」「入江にそって」収録。全米2位。
9
NASHVILLE SKYLINE
1969年。バーズも「ロデオの恋人」で突如カントリー・ロックとなって驚かせたが、60年代後期はフライング・ブリトー・ブラザーズ、ポコ、ニッティー・グリッティー・ダート・バンドが登場して、カントリー・ロックのブームが起きた。そうした動きがのちにイーグルスのデビューを招き、ウェストコースト・ロックの流行につながっている。このアルバムはバンジョーやマンドリンが使われているわけではないが、ギターはアコースティック・ギターを中心に、一部スチール・ギターも使われ、カントリー・ロックとなっている。つまり、ロックの流行の最先端だったアルバム。ボブ・ディランの歌い方、声が大きく変わり、カントリーというスタイルにあわせたかのようなすばらしい声だ。「北国の少女」は再録音で、カントリーの大御所、ジョニー・キャッシュが参加している。10曲で27分。全米3位。「アイ・スリュー・イット・オール・アウェイ」は85位、「レイ・レディ・レイ」は7位、「今宵はきみと」は50位。
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SELF PORTRAIT
1970年。2枚組。24曲のうち、ライブが4曲、カバーが6曲、インスト曲が2曲あり、順不同で並んでいる。ソウルやゴスペル調もあり、ライブやカバーも含めたアルバム全体がボブ・ディランの音楽的自己紹介となっている。社会性のある曲を含めないところに、ボブ・ディランの自己認識がうかがえる。カバー曲はエヴァリー・ブラザーズが3曲あり、ゴードン・ライトフット、サイモン&ガーファンクルが1曲ずつ。サイモン&ガーファンクルのカバーは「ボクサー」。オープニング曲は女性コーラスだけでボブ・ディランのボーカルは入らず、ストリングスも初めて導入され、また聞き手を驚かせる。「ウィグワム」はホーン・セクションが入り、ブラスロックとも呼べる。「ベル・アイル(美しい島)」は民謡ということになっているが、ボブ・ディラン作曲の「マイ・バック・ページズ」に似ている。「ライク・ア・ローリング・ストーン」と「マイティ・クイン」はライブ。「マイティ・クイン」はマンフレッド・マンがカバーしてヒットした曲で、ボブ・ディランが歌うバージョンとしては初めてレコード化された。全米4位。「ウィグワム」は41位。
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NEW MORNING
1970年。邦題「新しい夜明」。参加しているアーティストのほとんどにエレクトリック・ギター、エレクトリック・ベースという表示があり、従来のフォーク・ロック路線が戻った。オープニング曲の「イフ・ナット・フォー・ユー」はビートルズのジョージ・ハリソンとオリビア・ニュートン・ジョンのカバーで有名。「ファーザー・オブ・ナイト」はマンフレッド・マンズ・アース・バンドが大仰にカバー。全米7位。
 
BOB DYLAN'S GREATEST HITS VOL.2
1971年。21曲のうち6曲が未発表曲。「河のながれを見つめて」と「マスターピース」は1971年に録音。レオン・ラッセルがピアノで参加している。「明日は遠く」は1963年のライブ録音で、アコースティック・ギターだけで演奏される。全米14位。500万枚。
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PAT GARRETT&BILLY THE KID
1973年。邦題「ビリー・ザ・キッド」。映画のサウンドトラックで、全曲がボブ・ディランの作曲。10曲のうちボーカルが入っているのは4曲で、6曲はインスト曲だ。ウェストコースト・ロックのセッション・ミュージシャン、ラス・カンケル、ジム・ケルトナー、バーズのロジャー・マッギンが参加している。「天国への扉」はボブ・ディランの代表曲のひとつ。たくさんのアーティストがカバーしている。全米16位。「天国への扉」は12位。
13
DYLAN
1973年。カバーによる未発表音源集。エルヴィス・プレスリーの「好きにならずにいられない」、ニッティ・グリッティー・ダート・バンドの「ミスター・ボージャングルズ」、ジョニ・ミッチェルの「ビッグ・イエロー・タクシー」等のほか、「西部のユリ」「スペイン語は愛の言葉」を収録。「サラ・ジェーン」「ビッグ・イエロー・タクシー」は明るめの曲、「バラッド・オブ・アイラ・ヘイズ」はトーキング・ブルース風のバラードで、アルバム全体は曲調豊かだ。エルヴィス・プレスリー、ハンク・スノウの「フール・サッチ・アズ・アイ」と「スペイン語は愛の言葉」は「ナッシュヴィル・スカイライン」のような澄んだ声で歌う。全米17位。
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PLANET WAVES
1974年。バックバンドはザ・バンド。前作と同じ路線だが、純粋なスタジオ盤としてはブランクが開いた後のアルバムだったのでヒットした。バンドサウンドが安定しており、準備が整ったうえでの録音であることが分かる。「いつまでも若く」はテンポのゆっくりしたバージョンと速いバージョンを両方収録。全米1位。「こんな夜に」は44位。
 
BEFORE THE FLOOD
1974年。邦題「偉大なる復活」。2枚組ライブ盤。ザ・バンドとの共演で、「クリップル・クリーク」「アイ・シャル・ビー・リリースト」「エンドレス・ハイウェイ」「オールド・ディキシー・ダウン」「ステージ・フライト」「ザ・シェイプ・アイム・イン」「ホエン・ユー・アウェイク」「ザ・ウェイト」はザ・バンドだけでの演奏となっている。「くよくよするなよ」「女の如く」「イッツ・オールライト・マ」はボブ・ディランが1人で演奏する。「ライク・ア・ローリング・ストーン」「風に吹かれて」の歓声が大きい。「ザ・ウェイト」以降の5曲は圧巻だ。全米3位。
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BLOOD ON THE TRACKS
1975年。邦題「血の轍」。明らかにこれまでとは質が違い、曲がすばらしい。メロディーの流れや楽器の使い分けも申し分ない。ライブでよく演奏される「運命のひとひねり」「ブルーにこんがらがって」「嵐からの隠れ場所」「彼女に会ったら、よろしくと」を収録し、ボブ・ディランにもボブ・ディラン・ファンにも記憶に残るアルバムとなった。「愚かな風」収録。全米1位。200万枚。
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THE BASEMENT TAPES
1975年。邦題「地下室(ザ・ベースメント・テープス)」。67年にザ・バンドとセッションしたときの音源。「火の車」収録。2枚組。24曲のうちボブ・ディランが作曲にかかわっているのは17曲。セッションなので長い曲や展開に凝った曲はなく、5分台が1曲、4分台が3曲、残りの20曲が3分台以下だ。全米7位。
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DESIRE
1976年。邦題「欲望」。女性ボーカルにエミルー・ハリス、バイオリンにスカーレット・リベラを起用し、「血の轍」とは違った緊張感を生み出す。全体にドラムがハードで、ロックサイドに寄っている。「ハリケーン」はパーカッションが活躍する。「コーヒーもう一杯」「サラ」収録。全米1位。200万枚。「ハリケーン」は33位、「モザンビーク」は54位。ライブ盤、ベスト盤を含めるとこのアルバムが通算20枚目。
 
HARD RAIN
1976年。邦題「激しい雨」。ライブ盤。「血の轍」から3曲、「ナッシュビル・スカイライン」から2曲収録され、その他のアルバムが1曲ずつとなっている。スパイダース・フロム・マースのミック・ロンソンがギターで、スカーレット・リベラがバイオリンで参加しており、バイオリンは全曲に出てくる。「時代は変る」「風に吹かれて」「ライク・ア・ローリング・ストーン」などは収録されていない。1枚なので9曲しか収録されていないが、もっと多いはずなので完全版を出してほしいところだ。全米17位。
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STREET LEGAL
1978年。ホーン・セクションを本格的に取り入れた。鍵盤楽器はオルガンやピアノではなくキーボードという表記になっている。必要に応じてソウル風の女性コーラスがつく。前作からの傾向として個々の曲が長くなり、ボブ・ディランのボーカルも60年代ほど個性がきつくなくなったので聞きやすくなっている。「イズ・ユア・ラブ・イン・ヴェイン」収録。全米11位。イギリスでは最もヒットしたアルバム。
 
BOB DYLAN AT BUDOKAN
1978年。日本公演のライブ盤。2枚組。海外のライブ盤と異なるのは、観客の反応が歓声ではなく拍手中心になっているところだ。サックス、フルート、バイオリン、女性コーラスを含むビッグバンドで演奏され、代表曲をほぼ網羅している。22曲のうち「激しい雨」と重なっているのは「嵐からの隠れ場所」「マギーズ・ファーム」「オー、シスター」の3曲。「アイ・シャル・ビー・リリースト」はかなり編曲しており、「天国への扉」はレゲエのリズムになっている。全米13位。
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SLOW TRAIN COMING
1979年。ダイアー・ストレイツのギター、マーク・ノップラーが参加。オープニング曲の「ガッタ・サーブ・サムバディ」は同時代的なキーボードがモダンだ。「ゴナ・チェンジ・マイ・ウェイ・オブ・シンキング」はこれまでなかったようなギター・リフを使う。どの曲かは別にして、誰もがクリームを思い出すだろう。「マン・ゲイブ・ネームズ・トゥ・オール・ジ・アニマルズ」はレゲエのリズム。「血の轍」以降、サウンド面での新しい試みがずっと続いている。全米3位。「ガッタ・サーブ・サムバディ」は24位。カナダではこのアルバムが最大のヒット。
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SAVED
1980年。サウンド上の目新しさはなく、ロックでありながら保守的に落ち着いている。アルバムタイトル曲では、女性コーラスがソウルではなくゴスペル風だが、それ以外の曲ではあからさまにゴスペルという雰囲気ではない。歌詞は多分に宗教的。ボブ・ディランがどう思っているかにかかわらず、ボブ・ディランの歌詞が聞き手の精神的よりどころや支持の対象であるという状況が、評価の多様さを生んでいる。全米24位。
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SHOT OF LOVE
1981年。前作に続き、宗教的だ。クリスチャン・ロックやゴスペルでは、通常自分が信じる宗教以外の宗教をけなしたりしないが、このアルバムでは他の宗教を貶す曲が含まれる。「プロオアティ・オブ・ジーザス」はボブ・ディランの汚点か。アルバム全体としては、個々の楽器の音がきれいに響き、筋肉質なサウンドになっている。「ハート・オブ・マイン」はビートルズのリング・スター、ローリング・ストーンズのロン・ウッドが参加している。全米33位。
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INFIDELS
1983年。ギターはローリング・ストーンズのミック・テイラーとダイアー・ストレイツのマーク・ノップラー、キーボードもダイアー・ストレイツのアラン・クラーク。サウンドがモダンで、泥臭いボーカルのボブ・ディランには似合わないようなアダルト・オリエンテッド・ロック。「ストリート・リーガル」以前の歌詞に戻った。全米20位。「スウィートハート」は55位。これがボブ・ディランの最後のシングルヒット。
 
REAL LIVE
1984年。ライブ盤。イギリスとアイルランドの複数の公演から選曲している。「インフィデルズ」の収録曲は2曲で、7曲は60年代の曲。70年代の曲は「ブルーにこんがらがって」のみ。「ライク・ア・ローリング・ストーン」や「風に吹かれて」を収録していないのは過去のライブ盤と似たような選曲にならないようにするためか。「悲しきベイブ」の観客の合唱は大きい。ボブ・ディランの長いハーモニカ演奏も聴きどころ。「戦争の親玉」では80年代らしい長いギターソロが入る。ボブ・ディランとしては80年代に出た唯一のライブ盤なので、80年代にどんなライブをしていたのかの貴重な記録となっている。全米115位。
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EMPIRE BURLESQUE
1985年。アル・クーパー、ローリング・ストーンズのロン・ウッド、ミック・テイラー、ダイアー・ストレイツのアラン・クラーク参加。サウンドがさらにモダンになり、エレキ・ドラムを使用。「フォーリング・フロム・ザ・スカイ」は長いのに軽い印象。サイド・ボーカルに女性を使っている曲が多く、それによってソウル風に聞こえる。全米33位。
 
BIOGRAPH
1985年。未発表曲を多数含む5枚組ベスト盤。CDは3枚組。未発表曲は9曲、未発表バージョンは9曲。「ボブ・ディラン」から「ショット・オブ・ラヴ」までのアルバムから選曲されている。「欲望」のみ選曲されていないが、このころの未発表ライブ・バージョンが収録されている。未発表曲を多数収録してボックスセットにするという手法の先駆けとなった。全米33位。
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KNOCKED OUT LOADED
1986年。11分に及ぶ「ブラウンズヴィル・ガール」のためにあるようなアルバム。他の7曲は引き立て役に回っている。8曲のうちボブ・ディランの自作曲といえるのは2曲で、共作曲が3曲、民謡のアレンジが1曲、他のアーティストによる作曲が2曲となっている。ボブ・ディランのスタジオ録音のアルバムでは最も影が薄くなっているが、「ブラウンズヴィル・ガール」はボブ・ディランが長い叙事詩でも名曲を作る才能があることを確認できる。全米53位。
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DOWN IN THE GROOVE
1988年。10曲のうち、自作曲は4曲で、このうち2曲は共作。「ハッド・ア・ドリーム・アバウト・ユー」はエリック・クラプトン、ローリング・ストーンズのロン・ウッド、キップ・ウィンガー、ボー・ヒルが参加。他の曲ではダイアー・ストレイツのマーク・ノップラー、アラン・クラーク、グレイトフル・デッドのジェリー・ガルシアが参加。前作ほどサウンドに凝っておらず、素直な演奏。ゲスト・ミュージシャンが多彩なこと以外は冒険の少ないアルバム。全米61位。
 
DYLAN&DEAD
1989年。1987年にグレイトフル・デッドと共演したときのライブ。1枚なので7曲しか収録されていない。全曲がボブ・ディランの曲。グレイトフル・デッドならではというような何かが含まれているわけではないが、知名度のあるアーティスト同士による安定したロック・サウンドが聞ける。全米37位。
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OH MERCY
1989年。ボブ・ディランのボーカルが格段にうまくなったように見える。ゆっくりした曲を情感込めて歌う。10曲のうち軽快なのは2曲で、全体に落ち着いた印象。諦観も感じる。全米30位。
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UNDER THE RED SKY
1990年。エルトン・ジョン、デイヴィッド・クロスビー、スティーヴィー・レイ・ヴォーン、ブルース・ホーンズビー、アル・クーパー、ガンズ・アンド・ローゼズのスラッシュ、ビートルズのジョージ・ハリソンなどが参加し、ボブ・ディランのアルバムでは参加アーティストが最も豪華だ。曲ごとに演奏者のリストがついているので、どの曲で誰が演奏しているかが分かる。全曲がボブ・ディランによる作曲。全米38位。
 
THE BOOTLEG SERIES VOL.1-3(RARE&UNRELEASED)1961-1991
1991年。未発表音源集。3枚組。ほとんどの曲が未発表の曲またはバージョン。「風に吹かれて」のメロディーのもとになった「競買はたくさんだ」、「ロイヤル・アルバート・ホール」に収録されている「ジョン・バーチ・パラノイド・ブルース」「デイビー・ムーアを殺したのは誰?」、ピアノ伴奏による「時代は変る」、名曲とされる「ブラインド・ウィリー・マクテル」を収録している。全米49位。
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GOOD AS I BEEN TO YOU
1992年。アコースティックなサウンドに戻った。ボブ・ディランの曲はなく、全曲がアメリカ民謡や伝承歌、いわゆるトラディショナル・ソングとなっている。カントリーやブルースの世界では、代々伝えられ、独自の解釈が加えられていく曲を演奏するのが普通なので、ボブ・ディランがこのようなアルバムを出すのも不思議ではない。評価とは別次元のアルバムだ。全米51位。
 
THE 30TH ANNIVERSARY CONCERT CEREBRATION
1993年。2枚組ライブ盤。ザ・バンド、トム・ペティ、エリック・クラプトン、ロジャー・マッギン、スティービー・ワンダー、ニール・ヤング、ロン・ウッド、シンニード・オコーナーらがボブ・ディランの曲を歌う。28曲のうちボブ・ディランが歌っているのは4曲。解説にはこのコンサートで演奏された曲がすべて掲載されている。
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WORLD GONE WRONG
1993年。邦題「奇妙な世界に」。前作に続きアコースティックなサウンド。ボブ・ディランの曲はない。ほぼアコースティック・ギターのみで演奏され、ハーモニカが出てくる曲はわずか。90年代前半はブルース回帰がブームだったので、大物アーティストが手本を示したとも言える。全米70位。
 
BOB DYLAN'S GREATEST HITS VOLUME 3
1994年。未発表1曲を含むベスト盤。70年代以降の曲から選曲されている。以前の2枚のベスト盤と異なり、ボブ・ディランが選曲しているという。「ディグニティ」はこのベスト盤で初めて公開された。全米126位。通算40枚目。
 
MTV UNPLUGGED
1995年。アコースティックのライブ。バックバンドはギター、ベース、ドラム、オルガン、スライドギター。オルガンはプロデューサーで有名なブレンダン・オブライエンが演奏している。60年代の代表曲が多い。全米23位。
 
THE BEST OF BOB DYLAN
1997年。ベスト盤。60、70年代中心。デビューアルバムから「オー・マーシー」までの曲から選曲されている。「嵐からの隠れ場所」はオルタネイト・バージョン(別バージョン)となっており、アコースティック・ギターとハーモニカで演奏される。
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TIME OUT OF MIND
1997年。「アンダー・ザ・レッド・スカイ」以来7年ぶりに自作曲によるロック・アルバムとなった。ボブ・ディランの声が年齢とともにしわがれ声となり、70代のブルース歌手のアルバムを聞いているようだ。「ハイランズ」はイギリスのハイランド地方を歌っており、16分半ある。長い曲でも名曲だ。全米10位。
 
THE BOOTLEG SERIES VOL.4 BOB DYLAN LIVE 1966 THE ”ROYAL ALBERT HALL” CONCERT
1998年。邦題「ロイヤル・アルバート・ホール」。2枚組ライブ盤。フォークからロックに転換したときのライブを収録している。1枚目はアコースティック・ギターとハーモニカで演奏、2枚目はザ・バンドをバックバンドにエレキ・ギターで演奏する。フォーク・ロックに転換した直後のサウンドも貴重だが、むしろロック化したボブ・ディランに対する観客の動揺が聞きどころだ。そのための公式盤化でもある。全米31位。
 
LOVE SICK
1999年。2枚組シングル盤。4曲ずつ入っており、「ラヴ・シック」以外の7曲はすべてライブ・バージョン。
 
NOT DARK YET
1999年。シングル盤。タイトル曲以外の3曲はライブ。
 
THE BEST OF BOB DYLAN VOLUME2
2000年。ベスト盤。「ベスト・オブ・ボブ・ディラン」に収録されなかった曲を選曲している。「サブタレニアン・ホームシック・ブルース」「激しい雨が降る」「マイティ・クイン」「ハリケーン」収録。未発表曲はないが「シングス・ハヴ・チェンジド」はアルバム未収録曲。通算40枚目。
 
THINGS HAVE CHANGED
2000年。シングル盤。「ハイランズ」のライブ・バージョンはアルバムより5分短い。
 
 
THE ESSENTIAL BOB DYLAN
2001年。2枚組ベスト盤。日本盤は2003年発売。
 
BOB DYLAN LIVE 1961-2000~THIRTY-NINE YEARS OF GREAT CONCERT PERFORMANCES
2001年。デビュー前の1961年から2000年までのライブから16曲を選んで収録した企画盤。16曲のうち11曲が未発表バージョン。最初の曲の「サムバディ・タッチド・ミー」は2000年(この当時の最新)のライブで、デビュー当時から変わらないコロンビア・レコードのアーティスト紹介アナウンスから始まる。2曲目以降は1961年から2000年までのライブが時系列で並ぶ。1961年の「ウェイド・イン・ザ・ウォーター」はデビュー前の友人宅での録音。「アイ・ドント・ビリーヴ・ユー」は1966年にロック化したときのライブ。「グランド・クーリー・ダム」はバイク事故後最初のライブ。「天国への扉」は1974年の本格復帰のライブ。このほか、グレイトフル・デッドとの共演、アンプラグド・ライブなど、節目にあたるライブを曲の重複なく並べ、ライブによってボブ・ディランの歴史が分かるようになっている。「風に吹かれて」や「ライク・ア・ローリング・ストーン」を選曲していないのは、名曲を集めることが主眼ではないからだ。最後の曲が「シングス・ハヴ・チェンジド」になっていることも、よく考えられた選曲だ。日本のみで発売した企画盤としては優れている。
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LOVE AND THEFT
2001年。ボブ・ディランはこのアルバム発売時には60歳になっている。前作の「タイム・アウト・オブ・マインド」と同様、しわがれ声で低くなった声で歌われるが、曲のジャンルは多彩になった。以前からあるロックン・ロール、ブルースに加え、カントリー、ポップ・ボーカル、ブルース・ロックなど、1900年代前半のポピュラー音楽をひととおりやってみたという印象だ。チャーリー・セクストンがギターで参加している。
 
THE BOOTLEG SERIES VOL.5 Live 1975 THE ROLLING THUNDER REVUE
2002年。邦題「ローリング・サンダー・レヴュー」。2枚組ライブ盤。ビッグバンド形式で演奏し、ボブ・ディランのライブの中でも有名な「ローリング・サンダー・レヴュー」を収録している。「欲望」の発売前なので、「欲望」に収録されている「ハリケーン」「コーヒーもう一杯」「オー、シスター」「サラ」も演奏している。バイオリンは「欲望」と同じスカーレット・リベラ。ザ・バーズのロジャー・マッギン、ジョーン・バエズ、ミック・ロンソンも参加している。ロック時代の全盛期なので、ボブ・ディランのボーカルやバックバンドの演奏は素晴らしい。
 
MASKED AND ANONYMOUS
2003年。邦題「マスクト・アンド・アノニマス」。映画「ディランの頭の中」のサウンドトラック盤。ボーナストラックを含めて14曲すべてがボブ・ディランの曲。このうち4曲をボブ・ディランが演奏している。「ダイアモンド・ジョー」と「ディキシー」はスタジオ録音、「ダウン・イン・ザ・フラッド(堤防決壊)」と「コールド・アイアンズ・バウンド」はライブ録音。「マイ・バック・ページ」は真心ブラザーズが日本語でカバーしている。「イッツ・オール・オーヴァー・ナウ、ベイビー・ブルー」はグレイトフル・デッドがカバーしている。「ライク・ア・ローリング・ストーン」はスペイン語によるヒップホップのカバー。
 
THE BOOTLEG SERIES VOL.6 BOB DYLAN LIVE 1964-CONCERT AT PHILHARMONIC HALL
2004年。邦題「アット・フィルハーモニック・ホール」。2枚組ライブ盤。フォークに社会的な歌詞を織り込み、それを支持する観客とボブ・ディランとの友好的なやりとりを収録している。「ジョン・バーチ・パラノイド・ブルース」「デイビー・ムーアを殺したのは誰?」を収録。2枚目のうち4曲はジョーン・バエズがゲストで参加し、デュエットしている。政治的な曲や歌詞が出てくると観客の拍手が大きくなり、会場全体の一体感が伝わってくる。
 
IDEN&TITY
2004年。みうらじゅんの漫画「アイデン&ティティ」に出てくるボブ・ディランの曲を収録した企画盤。
 
THE BOOTLEG SERIES VOL.7 NO DIRECTION HOME:THE SOUNDTRACK
2005年。ボブ・ディランがフォーク歌手として成功し、フォーク・ロックへと変化していく過程を描いた映画「ノー・ディレクション・ホーム」のサウンドトラック。28曲のうち26曲が未発表曲で、1曲目は1959年の録音。最後の曲は「ロイヤル・アルバート・ホール」に収録されている「ライク・ア・ローリング・ストーン」で、観客が「ユダ(裏切り者)」と叫ぶ有名なシーンも含まれている。映画ではその映像も見られるようだ。1枚目がフォーク時代の演奏、2枚目がフォーク・ロック時代の演奏となっており、1枚目には個人的な録音も収録されている。
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MODERN TIMES
2006年。「ラヴ・アンド・セフト」に近いサウンド。アコースティック・ギター中心で、アップテンポな1、3、5、9曲目は1950年代のジャズバンド風ロックン・ロールだ。ボブ・ディランはブルースを歌うように、または語るように歌う。枯れた声という表現が合っている。10曲で62分あり、半分は6分以上ある。
 
DYLAN
2007年。3枚組ベスト盤。51曲収録。おおむね年代順に並んでいる。1枚に編集されたCDもある。
 
TELL TALE SIGNS RARE AND UNRELEASED1989-2006:THE BOOTLEG SERIES VOL.8
2008年。「オー・マーシー」、「タイム・オウト・オブ・マインド」録音時のアルバム未収録曲を中心に「奇妙な世界に」、「モダン・タイムス」録音時の未収録曲、90年代以降のライブを含んだ企画盤。
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TOGETHER THROUGH LIFE
2009年。オープニング曲からアコーディオン、トランペットを使い、別の曲ではバイオリンも使う。曲調は違うが、「ナッシュビル・スカイライン」が50年代ロックン・ロールになったような雰囲気。ボブ・ディランは高音が厳しくなってきたが、つらいという感じではない。10曲で45分。
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CHRISTMAS IN THE HEART
2009年。クリスマス・ソングを歌った企画盤。有名曲を枯れた声で歌っている。コーラスもつき、鈴の音も曲によっては入れている。大半の曲が2分台で、ボブ・ディランの自作曲はない。オリジナル・アルバムより軽い気持ちで聞ける。
 
DYLANがROCK
2010年。2枚組ベスト盤。みうらじゅんが選曲している。アルバム収録曲のほか、「ノー・ディレクション・ホーム」「バイオグラフ」「グレーテスト・ヒット第3集」などからも選曲されている。「リタ・メイ」は「メンフィス・ブルース・アゲイン」のB面、「親指トムのブルースのように(ライヴ)」は「アイ・ウォント・ユー」のB面収録曲。
THE WITMARK DEMOS:1962-1964:THE BOOTLEG SERIES VOL.9
2010年。ボブ・ディランが「ボブ・ディラン」でデビューしたころ、一時的に契約していた出版社で録音した曲を集めた企画盤。「風に吹かれて」「はげしい雨が降る」「戦争の親玉」「くよくよするなよ」「時代は変わる」「ミスター・タンブリン・マン」のような有名曲から、未発表の15曲を含め47曲収録。ボブ・ディランが1人で演奏している。ほとんどの曲、もしくは全曲が一発録音とみられる。デモテープなので音質は限られ、全曲がモノラル録音となっている。「風に吹かれて」で途中に咳払いが入ったり、「戦争の親玉」でドアの開閉音が入ったり、曲が終わらないうちに話し声が入ったりと、デモテープらしさが伝わる。ボブ・ディラン(の才能)がそれまでのポピュラー音楽のアルバム制作のあり方を変えたという解説は面白い。
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TEMPEST
2012年。ブルースのアーティストのようなサウンド。ボブ・ディランがギター、ピアノを弾くほか、ギター2人、ベース、ドラム、アコーディオン兼バイオリン、スチールギターの7人で同時に演奏して録音している。ブックレットに歌詞は掲載されていないが、「ロング・アンド・ウェイステッド・イヤーズ」や「ペイ・イン・ブラッド」とのタイトルから、歌詞もブルースに則っていると思われる。アルバムタイトル曲は14分、ビートルズのジョン・レノンについて書いたという「ロール・オン・ジョン」は7分半、ほかにも7分台が2曲、9分が1曲ある。ボブ・ディランが70歳代になっても、あるいはなったからこそ、ウディ・ガスリーのようなあり方を追尾しているのかもしれない。
ANOTHER SELF PORTRAIT(1969-1971):THE BOOTLEG SERIES VOL.10
2013年。「セルフ・ポートレイト」と「新しい夜明」のころの録音を集めた企画盤。4枚組では「セルフ・ポートレイト」のリマスター版と「ワイト島ライブ」の完全版が含まれている。「スペイン語は愛の言葉」は「ディラン」収録曲と異なりピアノだけで演奏。「ミンストレル・ボーイ」はザ・バンドと「地下室」を録音していたときの曲。「アイ・スリュー・イット・オール・アウェイ」「カントリー・パイ」は「ナッシュヴィル・スカイライン」のときのなので声も澄んでいる。オーケストラが入った「サイン・オブ・ザ・ウィンドウ」、ホーンセクションが入った「新しい夜明け」、ホーンセクションが入らずにボブ・ディランの声が入る「ウィグワム」は新鮮だ。ホーンセクションが入った「新しい夜明け」はアルバムに採用されてもよかった。「ワーキング・オン・ア・グルー」はビートルズのジョージ・ハリソンがギターを弾く。「時はのどかに流れゆく#1」でも弾いているが申し訳程度。
SIDE TRACKS
2013年。アルバム未収録曲等を収録した企画盤。2枚組。30曲のうち19曲は「バイオグラフ」、1曲が「ボブ・ディラン・グレイテスト・ヒッツ第1集」、6曲が同「第2集」、1曲が同「第3集」、1曲が2007年の「ディラン」、1曲がサウンドトラック盤、シングル盤のみの曲が1曲。日本盤解説では「ゴチャマゼの混乱」「窓からはい出せ」「寂しき4番街」「ジョージ・ジャクソン(アコースティック)」がシングル盤収録となっているが、「窓からはい出せ」は「第2集」、「寂しき4番街」は「第1集」と「バイオグラフ」に収録されている。「ゴチャマゼの混乱」はシングルバージョンであれば「バイオグラフ」の再発盤に収録されているが、初回盤はシングルとは異なるバージョンなので収録されていない。「ジョージ・ジャクソン(アコースティック)」は初CD化とみられる。概ね年代順に曲が並んでおり、1枚目は60年代、2枚目は70、80年代が中心。2枚目の半ば以降は音の厚いロック。
THE BASEMENT TAPES COMPLETE:THE BOOTLEG SERIES VOL.11
2014年。ボブ・ディランが1967年にザ・バンドと録音したテープを復元した企画盤。6枚組。6枚目はボーナスディスクという扱いになっている。2枚組もある。この企画盤の主眼はテープの復元であり、「地下室(ザ・ベースメント・テープス)」の増補版を作ることではないとコンプリート版の解説にわざわざ書かれている。1975年に出た「地下室(ザ・ベースメント・テープス)」は1967年当時のテープをそのまま収録しているのではなく、編集、加工して収録されている。この企画盤に1975年の「地下室(ザ・ベースメント・テープス)」のサウンドを期待する聞き手が多数いることは十分予想され、そのような聞き手に対して先に説明している。後の検証に耐えうるよう、テープの音をあえて特定の方向に持っていこうとしなかったことは、音源への接し方としてむしろ誠実だ。6枚の曲はほぼ録音時期の順に並んでおり、3枚目から「地下室(ザ・ベースメント・テープス)」の収録曲が多く出てくる。カーティス・メイフィールドの「ピープル・ゲット・レディ」のカバー、カーター・ファミリーの「ワイルドウッド・フラワー」のカバー、ブルース調の「風に吹かれて」は興味を引く。ザ・バンドのメンバーのうちドラムのレヴォン・ヘルムは当初不在だったので、ガース・ハドソンのオルガンがリズムの役割を果たしている。6枚を通じて分かることは、曲中のボブ・ディランの笑い声が多く、雰囲気がよかったであろうこと、同じ曲を異なる拍子やテンポで試し演奏し、適切な演奏を見つけようとしていること、うろ覚えでも民謡やブルースなどの伝承音楽を多数演奏していることだ。
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SHADOWS IN THE NIGHT
2015年。フランク・シナトラを中心に、1920年代から60年代のスタンダード曲をカバーしたアルバム。ギターとペダルスティール、ベースでゆっくり演奏され、ボブ・ディランがメロディーを明瞭に歌う。フランク・シナトラのようにうまくはなく、歌唱力を求めるような企画でもないが、ボブ・ディランが若いころに親しんでいた曲を知ることができる。これまでボブ・ディランが歌う他人の曲はウディ・ガスリーやブルース、民謡が多かったが、今回ポピュラー音楽の王道、しかも反動的言動が目立つフランク・シナトラを取り上げたことは多くの聞き手にざわめきを起こす。しかし、多くの聞き手と同じようにボブ・ディランも、音楽に興味を持つきっかけは流行歌だったはずだ。高齢になったボブ・ディランが少年時代を回顧する心境になったことの方が重要かもしれない。
THE CUTTING EDGE 1965-1966:THE BOOTLEG SERIES VOL.12
2015年。ボブ・ディランがフォーク歌手からフォークロック歌手になる1965年から66年ごろの録音を集めた企画盤。バンド編成になったころの録音を集めているので、多くの曲にアル・クーパー、マイク・ブルームフィールドが参加している。4枚目の「メディシン・サンデー」から5枚目の「シーズ・ユア・ラヴァー・ナウ」まではザ・バンドの前身バンドと演奏している。3枚目は全曲が「ライク・ア・ローリング・ストーン」の録音となっており、20回近くの失敗作、リハーサルを収録している。7曲目がアルバムに収録されたバージョンとなっているが、アルバムとは異なりフェードアウトの編集をする前の状態で収録されている。出てくるバンドメンバーはザ・バンドの5人のほか、アル・クーパー、マイク・ブルームフィールド、チャーリー・マッコイ、ウェイン・モス、ジョー・サウス、ジョン・セバスチャン、ポール・グリフィンら、数年後に活躍する人ばかり。
MELANCHOLY MOOD
2016年。シングル盤。4曲収録。「シャドウズ・イン・ザ・ナイト」と同時期に録音され、次作に収録予定の4曲を収録。「シャドウズ・イン・ザ・ナイト」と特に変わるところはない。
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FALLEN ANGELS
2016年。「シャドウズ・イン・ザ・ナイト」に続く、フランク・シナトラを中心としたカバー曲集。ボブ・ディランに限らず、高齢化すれば誰にでも懐古の心境が生まれるが、「シャドウズ・イン・ザ・ナイト」とこのアルバムはそれを反映している。少なくとも音楽家としての現役意識は薄れているだろう。多くの聞き手は1940、50年代のポップスを詳しく知らないので、ボブ・ディランが録音したからといって、これらの曲のよさをあらためて見直すということはないし、数あるカバーの中の1つとして認識するだろう。ボブ・ディランの音楽的ルーツを示しているとはいえ、「セルフ・ポートレート」や「グッド・アズ・アイ・ビーン・トゥ・ユー」ほどの意義はない。ただ、意義が小さいからこそ可能な企画とも言える。

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