AXXIS

アクシスはドイツのハードロックバンド。デビュー時4人編成。2枚目のアルバムからキーボードを加え5人編成。ドイツのハードロックとしては珍しくデビュー当初からメジャーレーベルだった。90年代中期はグランジ、オルタナティブロックの影響を受け、2000年代は厚みを増したハードロックとなっている。

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KINGDOM OF THE NIGHT

1989年。邦題「暗黒の支配者」。4人編成。ボーカルの線がやや細いが、オーソドックスなハードロック。ボーカルは主に高音域で歌うが声域は広い。同時期のドイツのハードロックバンド、ボンファイアに比べると派手さがなく、あからさまにアメリカのハードロックに追随しているという印象はない。ボーカルの線の細さとサビのコーラスがドイツのあか抜けなさを強調しているのかもしれない。「うたかたの世界」「地獄へ道づれ」収録。

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II

1990年。邦題「アクシスII・帝国興隆」。キーボードが加入し5人編成。キーボードはソロをとることはなく、バックの演奏が主体。代表曲である「リトル・ルック・バック」は唯一キーボードがメロディーを牽引する。「あの楽園は何処へ」のようなヒット性に富む曲もあるが、このバンドの本来の姿はややドラマチックな哀感を帯びた曲だろう。

 
ACCESS ALL AREAS

1991年。邦題「アクセス・オール・エリア・アクシス・ライヴ!!」。ライブ盤。未発表曲が2曲あり、1曲はスピーディーなインスト。ボーカル入りの「バック・トゥ・ザ・ウォール」はデビュー5年前の曲。

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THE BIG THRILL

1993年。ニューヨークで録音されているのがどう影響したのか分からないが、アメリカのバンドが出すようなサウンドになっている。オープニング曲のイントロから早くも「サウンドが変化した」と分かるほど変わっている。もともと個性の強いボーカルが、前作と同じような歌い方をしているため、このバンドの個性がボーカルにあることを確認できる。キーボードが活躍するようになり、ロックン・ロールのノリが出る曲もある。最後の「ネバーランドへの道」がこのアルバムの雰囲気を象徴している。

 
PROFILE -THE BEST OF AXXIS

1994年。ベスト盤。「暗黒の支配者」から4曲、「アクシスII・帝国興隆」から3曲、「アクセス・オール・エリア・アクシス・ライヴ!!」から4曲、「ザ・ビッグ・スリル」から5曲。日本盤は「ネバーランドへの道」のアコースティック・バージョンを収録。

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MATTERS OF SURVIVAL

1995年。ベースが交代。ロサンゼルスで録音し、プロデューサーが大物のキース・オルセンであることを強調している。デビューした頃のドラマチックでハイトーンを中心とした繊細なメロディーは薄くなり、暗めの曲が目立つ。ベースが入れ替わったことは大きく、サウンドの核はギターではなくベースが作っていることが分かる。キーボードはいなくてもいい程度にしか登場しない。オルガン中心。

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VOODOO VIBES

1997年。「ザ・ビッグ・スリル」からのアメリカ寄り路線を大きく押し進めたアルバムで、全体的に暗く重苦しい。サウンドもドローン効果を多用し、ギターは低音中心、全曲がミドルテンポだ。やや明るめの「フライ・アウェイ」にしてもギター、ベースは低音で響く。「サラエボ」はサヴァタージの「サラエボ」と同じ内容。この曲と「デザート・ソング」はインダストリアル・ロックのようなドラムの音が聞ける。「オールライト」はニルヴァーナの「スメルズ・ライク・ティーン・スピリット」のイントロに似ている。

 
COLLECTION OF POWER

2000年。ライブ4曲、デモ・バージョン2曲、「ヘヴン・イズ・ブラック」のアコースティック・バージョンを収録した企画盤。ライブはデビュー盤の「地獄へ道づれ」も収録。

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BACK TO THE KINGDOM

2000年。ギターとベースが交代。初期の頃に戻った。ボーカル、ギター、コーラスが高音域を中心に展開され、暗い曲はない。アコースティック・ギターを使うバラードも定番だ。「アイス・オン・ファイアー」はデビュー盤の「地獄へ道づれ」を思い出させる。「キス・ヒム・グッバイ」はスティームの「ナ・ナ・ヘイ・ヘイ・キス・ヒム・グッバイ」のカバー。

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EYES OF DARKNESS

2001年。コンセプト盤らしく、他のアルバムとは多少雰囲気が違う。コンセプトというよりは物語的で、イギリス人でもなくアメリカ人でもないヨーロッパ人としての内面を初めて打ち出した。暗めの曲もあるが、「ブードゥー・バイブス」のころの暗さとは方向が違う。「4人の騎手」はヴァンゲリスのいたアフロディーテス・チャイルドのカバー。

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TIME MACHINE

2004年。ドラムが抜け4人編成。オープニング曲はハードで、この雰囲気が最後まで続く。アクシスのアルバムでは最もハード。ツーバスの連打が何曲も続く。「ウィンド・イン・ザ・ナイト」のような覚えやすい曲もある。復活のインパクトは大きい。

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PARADISE IN FLAMES

2006年。ドラムが加入しキーボードを含む5人編成。デビュー時からのメンバーはボーカルのベルンハルト・ヴァイスだけ。「アクシスII・帝国興隆」から参加したキーボードもオリジナルのメンバーと言っていいほど長くなった。前作のハードさに加え、女性ボーカルが全面的に参加し、コーラスが厚くなっている。女性ボーカルのラコーニアは声の太さ、通り、大きさとも申し分なく、高音でのコーラスの厚さに大きな貢献をしている。曲によってはリード・ボーカルや男女ダブル・ボーカルになる。「ラコーニア」は古代ギリシャのドーリア人国家の名前。

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DOOM OF DESTINY

2008年。ゲストの女性ボーカル、ラコーニアが全面的に参加し、男女ツイン・ボーカルとなっている。1曲目は2曲目に続くイントロで、コーラスからすでに女性ボーカルが加わる。5曲目まではパワフルなヘビーメタル。ゆっくり聞かせる曲は「ザ・ファイア・スティル・バーンズ」のみで、あとはすべてヘビーメタル。「ベター・フェイト」「ファーザー、ファーザー」に限らず、曲によってはベルンハルト・ヴァイスのボーカルがガンマ・レイのカイ・ハンセンと同じようなボーカルに聞こえる。

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UTOPIA

2009年。単独ボーカルに戻った。前作ほど全面的ではないが女性ボーカルも少しだけ入っている。バックの演奏はキーボードが入ったヘビーメタルとして一流になってきており、バンドの個性はベルンハルト・ヴァイスのボーカルだけになってきている。このサウンドをベースにして、アルバム1枚限りの変化が何かあってもよい。日本盤は「日本盤のみボーナストラック2曲付き!」と帯に書かれているが、収録されていない。手違いと思われる。

 
UTOPIA

2009年。ボーナストラックが2曲入ったデジパック盤。ボーナストラックの「20イヤーズ・アニヴァーサリー・ソング」がポイントで、ハロウィンのアンディ・デリス、ピンク・クリーム69のデイヴィッド・リードマン、デストラクションのシュミーア、ドロ・ペッシュなどが12分にわたってアクシスの代表曲を歌っていく。「リトル・ルック・バック」で始まり「リトル・ルック・バック」で終わる。

REDISCOVER(ED)

2013年。70年代から90年代のヒット曲をカバー。イエス、ボニー・M、ビー・ジーズ、クラフトワーク、ビリー・アイドル、フィル・コリンズ、ポリス、ジェスロ・タル、オーパス、ジェファーソン・エアプレイン、ELO、セリーヌ・ディオン、キッスの曲をカバーしている。ギター中心のバンドサウンドで、キーボードは効果的に使われていない。ポリスの「孤独のメッセージ」は苦しい。

KINGDOM OF THE NIGHT II

2014年。デビュー盤の「暗黒の支配者」に近い曲調を狙っている。ブラック・エディションとホワイト・エディションがあり、ブラック・エディションはヘビーメタル、ホワイト・エディションはハードロックとなっている。「暗黒の支配者」の続編のようなアルバムタイトルだが、タイトル曲以外は通常のヘビーメタルの曲調だ。

KINGDOM OF THE NIGHT II

2014年。ホワイト・エディション。ハードロックというよりは、ブラック・エディションよりも前向きな歌詞が多いというとらえ方が妥当だ。「リヴィング・イン・ア・ドリーム」は「暗黒の支配者」の「リヴィング・イン・ア・ワールド」を思わせる。

RETROLUTION

2017年。90年代の一般的なハードロック、ヘビーメタルで、ドイツやヨーロッパの主流からみれば古風なサウンドだ。バンドの音をレトロと認識している点は、ヨーロッパのヘビーメタルの状況をよく理解していると言える。

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MONSTER HERO

2019年。このアルバムがデビュー30年のアルバムとなるが、古風な曲調、歌詞の中身の薄さはジューダス・プリーストを思わせる。ここからサウンドが発展するとは思えず、ドイツの中でも中堅バンドにとどまったままになるだろう。「バック・トゥ・キングダム」「キングダム・オブ・ザ・ナイト2」できちんとデビュー時に戻らなかったのは失敗だった。