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TOBIAS SAMMET'S AVANTASIA

1
THE METAL OPERA
2001年。エドガイのボーカル、トビアス・サメットの個人プロジェクト。先に物語があって、これをヘビーメタルで表現しようとする場合、登場人物が多くなったり人間関係が重要になったりするとボーカルを1人でこなすのは難しくなる。したがって、多数のゲスト・ボーカルを起用することになる。このアルバムではハロウィンのマイケル・キスク、アングラのアンドレ・マトス、インペリテリのロブ・ロック、ガンマ・レイのカイ・ハンセン、アット・ヴァンス、ヴァージン・スティール、ウィズイン・テンプテーションのボーカルが参加している。ストラトヴァリウスのティモ・トルキは出てくる必然性が2あまり感じられない。バックの演奏メンバーは基本的に固定で、ハロウィンのマーカス・グロスコフ、ガンマ・レイのヘンニュ・リヒターらが参加している。サウンドはエドガイとそれほど変わらない。マイケル・キスクやロブ・ロックが登場すると、トビアス・サメットと比較されることは避けられず、分が悪い。
2
THE METAL OPERA PT.II
2002年。前作の続編なので、登場人物も同じ。ストラトヴァリウスのティモ・トルキはボーカルとしては役から外された。マグナムのボブ・カトレイが新たに参加。話の流れからして、パート3以降もあると思われる。前作に比べて堅苦しさが取れた。ストーリーは前作を踏襲しなければならないので「おもしろくなる」というようなことはないが、サウンドはロマン派オペラよりは古典派オペラに近くなった。
 
LOST IN SPACE PART 1
2007年。シングルにカバー等を加えたEP。演奏メンバーは固定されており、トビアス・サメットがボーカル兼ベース、ヘヴンズ・ゲイトのサシャ・ピート、ガンマ・レイのヘンニュ・リヒターがギター、アイーナのマイケル・ローデンバーグがキーボード、キッス、スコーピオンズのエリック・シンガーがドラム。「レイ・オール・ユア・ラヴ・オン・ミー」はアバのカバー。ハロウィンもカバーしたことがある。「ライド・ザ・スカイ」はルシファーズ・フレンドの「ライド・イン・ザ・スカイ」のカバー。「イン」が抜けているのはトビアス・サメットの勘違いと思われる。「ザ・ストーリー・エイント・オーヴァー」はマグナムのボブ・カトレイが参加しているが、曲もマグナムが作りそうなメロディーだ。ゴスペル風女性もいい。トビアス・サメットの解説はゴスペル風コーラスが入った曲を間違えているのではないか。「アナザー・エンジェル・ダウン」はヨルン・ランデが参加。声のパワーは圧倒的。
 
LOST IN SPACE PART 2
2007年。シングルにカバー等を加えたEP。「ロスト・イン・スペース」はパート1と同じ曲。「プロミスト・ランド」はマイケル・キスクとヨルン・ランデが参加。マイケル・キスクは出てくればすぐに分かる個性がある。曲もハロウィンが作りそうな曲。ゴスペル風の女性コーラスがつく。「ダンシング・ウィズ・ティアーズ・イン・マイ・アイズ」はウルトラヴォックスのカバー。ヨーロッパではウルトラヴォックスの人気が(英米や日本に比べ)大きい。「イン・マイ・ディフェンス」はフレディー・マーキュリーのカバーで、作曲しているのはデイブ・クラーク・ファイブのデイブ・クラーク。
3
THE SCARECROW
2008年。ボーカル兼ベースのトビアス・サメット、ギターのサシャ・ピート、ドラムのエリック・シンガーが基本メンバー。キャメロットのロイ・カーン、マグナムのボブ・カトレイ、ハロウィンのマイケル・キスク、ミレニアム、マスタープランのヨルン・ランデ、アット・ヴァンスのオリヴァー・ハートマン、アリス・クーパーがボーカルで参加。女性ボーカルのアマンダ・ソマーヴィルはカナダ出身でドイツで活動するシンガー・ソングライター。ガンマ・レイのカイ・ハンセン、ヘンニュ・リヒター、スコーピオンズのルドルフ・シェンカーがギターで参加している。今回も物語に沿って曲が進んでいくが、これまでに多数出たヘビーメタルのコンセプト・アルバムと変わるところがなく、このアルバムが特に意義を持つようなところはない。マイケル・キスクやヨルン・ランデがトビアス・サメットよりも迫力があるとか、低音部分を歌うとロイ・カーンはすばらしいというのは、このアルバムに限ったことではない。ストリングスやコーラスもこれまでどおり。アリス・クーパーがリード・ボーカルをとる「ザ・トイ・マスター」は、アリス・クーパーが歌っているという事実だけが聞きどころ。
4
THE WICKED SYMPHONY
2010年。「エンジェル・オヴ・バビロン」とともに2枚同時に発売された。ボーカルのヨルン・ランデ、ラッセル・アレンは複数の曲でボーカルを取っており、バックの演奏陣とともにアルバム全体を通して協力している。マイケル・キスクは2曲、クラウス・マイネ、アンドレ・マトス、ティム・リッパー・オーウェンズ、ボブ・カトレイは1曲ずつの参加で、おおむね1曲を通して歌っている。先に参加者が決まってから曲ができたような印象だ。エドガイとの違いが見えにくい。
5
ANGEL OF BABYLON
2010年。「ザ・ウィキッド・シンフォニー」とともに発売された。アレン・ランデの2人、マイケル・キスク、ボブ・カトレイのほか、サヴァタージのジョン・オリヴァ、ストラトヴァリウスのヤンス・ヨハンソン、ガンマ・レイ、ハロウィンのヘンニュ・リヒター等が参加している。同時に発売された2枚のうち、このアルバムの「シンフォニー・オヴ・ライフ」だけがギターのサシャ・ピート作曲。残りの21曲はすべてトビアス・サメットが作曲している。このアルバムは女性ボーカルや混声コーラスが使われ、サウンドが多彩だ。「ザ・ウィキッド・シンフォニー」にも女性ボーカルやコーラスが入った方がバランスがよかったかもしれないが、一方に集約したことで2枚のサウンドの違いが明確になっているとも言える。物語に基づいて作曲されているのでポップな曲はないが、入っていてもよい。
6
THE MYSTERY OF TIME
2013年。トビアス・サメットが創作したファンタジーに沿って曲が進む。アルバムの最後に「第1章終了」とあるので、次作以降もこのアルバムの続編が出るとみられる。ゲストボーカルが7人参加しており、曲ごとにトビアス・サメットとゲストボーカルがデュエットするように歌う。2曲目はジョー・リン・ターナー、3曲目はサクソンのビフ・バイフォード、4、9曲目はハロウィン、ユニソニックのマイケル・キスク、7曲目はプリティ・メイズのロニー・アトキンス、8曲目はMR.BIGのエリック・マーティン、10曲目はマグナムのボブ・カトレイがメインのボーカルとして歌う。実際にトビアス・サメットと同じ空間でデュエットしているのはジョー・リン・ターナーとマイケル・キスクだけで、他のボーカルは別の場所で曲に合わせて歌っている。マイケル・キスクとエリック・マーティンは個性が突出している。マイケル・キスクにはスピーディーな曲、エリック・マーティンにはミドルテンポの曲が用意されているので、ボーカルの個性を勘案した作曲または選曲をしたようだ。毎回参加しているアーティストのうち、ヘヴンズ・ゲイトのトーマス・リトケ、アット・ヴァンスのオリヴァー・ハートマンはコーラスで参加。マスタープランのヨルン・ランデは参加していない。ドイツの映画音楽オーケストラが参加している。物語のテーマはこれまでに多くのアーティストが扱ってきた「科学と人間」で、トビアス・サメットが歌う科学者のアーロン・ブラックウェルが、自己形成を経ながら科学技術の進歩と人間の幸福の関係について答えを導き出そうとする。アーロン・ブラックウェルを他の配役と同じように観念的単語で置き換えるならば「倫理」か。科学技術の進歩とは「文明」であり、倫理とは哲学であり「文化」だ。文明に対して文化が対抗するという図式は、ドイツで19世紀から扱われてきた議論であり、文明とはフランス、イギリス、アメリカ、文化にはドイツの国柄が想定されている。そこには、文明よりも文化が重要であるというドイツ人の理想が込められている。こうしたテーマをドイツ特有の教養小説のように物語を作っており、現実の世界と仮の世界を対置する手法はヘルマン・ヘッセの「デミアン」に近い。アヴァンタジアのアルバムがドイツ語圏では大きな人気を獲得し、他の地域で相応の人気を得られていないのは、ハードロック、ヘビーメタルという大衆文化の音楽でありながら、ドイツ語圏特有の教養エリート主義的であるからだ。2曲目でジョー・リン・ターナーが歌う「科学」とともに、「時代精神」も一緒に歌っていることになっているが、「時代精神」はここにしか出てこず、特定のボーカルが割り当てられていない。「時代精神」が「科学」と一体になっていることは現代の社会の空気に対する批判だろう。
7
GHOSTLIGHTS
2016年。「ザ・ミステリー・オヴ・タイム」の続編。マイケル・キスク、ロニー・アトキンス、ボブ・カトレイが前作に続き参加していながら、前作とは異なる配役で歌っている。いずれも前作には出てこない役なので、一人二役と解釈できる。前作でジョー・リン・ターナーが歌っていた観念としての「科学」は、このアルバムでは人間としての「科学者1」「科学者2」となり、リンチ・モブのロバート・メイソン、クイーンズライチのジェフ・テイトが歌う。ほかにボーカルとしてトゥイステッド・シスターのディー・スナイダー、ナイトウィッシュのマルコ・ヒエタラ、マスタープランのヨルン・ランデ、ウィズイン・テンプテーションのシャロン・デン・アデルが参加している。オーケストラは使わず、キーボードも1人になって、トビアス・サメットがキーボードも兼任するようになったため、サウンドのはロック寄りになっている。物語は次作につながらず、このアルバムで終わるようだ。トビアス・サメットの考え方を結論とせず、聞き手に解釈を委ねるようにしたことは、特定の考え方が唯一の答えではないという現代的な落としどころとなった。

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